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ワリコミ! 幻奏喫茶アンシャンテ(ハロウィンAfter)

『 トリック・オア・トリート! 』


人も人外も関係なく。
彼らが陽気な装いと台詞で出迎えたくれた、
賑やかな宴の後のお話だ――。



* * *


かぼちゃをたっぷり使ったお菓子を中心とした、
ハロウィンパーティーの後片付けが終わり。

皆が着替えのために店内から去ったあと、
そろそろ普段着に戻ろうかと部屋に向かおうとした私を――。

琴音
「............あれ?」

――ポツン、と。
テーブルの上に置かれた、
ジャック・オ・ランタン柄の可愛い便箋が出迎えた。

琴音
「......? なんだろう、これ。
 パーティーが終わるまでは、なかったはずだけど......」

狩也
「――あのさ、琴音。
 この衣装妙に脱ぎにくいから、
 ちょっと手伝ってほしいんだけど......」

コロロ
「きゅー!」

首を捻る私の元へ、
2階の空き部屋にいた可愛い狼男さんと
可愛いゴーストさんのコンビが下りてきた。

狩也
「............って、どうしたの? なにそれ、手紙?」

琴音
「うん......たぶん、常連の誰かが置いていったのかな?」

誰から誰の手紙だろうと、ひっくり返してみれば――。

『我らがアンシャンテのマスター、琴音へ。常連一同より』

――と、綺麗な文字ではっきりと書かれていた。

琴音
「......私宛?」

狩也
「この文字、ミシェル?
 ......用があるなら直接言ったほうが早くない?」

琴音
「何か事情があるのかも......開けてみようか?」

コロロ
「きゅるー!」

可愛い便箋を破かないよう、慎重に開けば――。

『今日の賑やかな宴へのお礼として――。
 君と、お供の可愛いゴーストさんたちに、
 ささやかなプレゼントを用意しています』

『っていうわけでその姿のまま、
 店内のどこかにいる俺たちを探してみてね~♪』

最後は可愛い音符マークで締めくくられていた。同時、

――ポンっと。

琴音
「わっ......!?」

リボンや紙吹雪と共に眼前に丸い【何か】が現れる。
慌ててそれを、キャッチしてみれば......。

琴音
「あ、可愛い......!
 ジャック・オ・ランタンの形をしたカゴだ――」

狩也
「......これを持って探しに来いってことかな?」

コロロ
「――きゅ、きゅ、きゅ」

狩也
「――あ、こら、コロロ。
 中に入ろうとするな、
 確かにちょうどすっぽり収まりそうな大きさだけど......」

琴音
「ふふ、ハロウィンが終わったら、
 しばらくはコロロのおもちゃになりそうだね」

......でもここまで用意してもらえば、
【プレゼント】が何かも予想がつく。

......うず、と。
悪戯心というか――童心が弾んで止まらない。

琴音
「じゃあお言葉に甘えて――狩也くん、コロロ、行こっか。
 今頃......いつもとは違う【お客様】たちが、
 今か今かと私たちを待ってるよ」

可愛く笑うジャック・オ・ランタンを従えて、
私たちは小さな冒険へと向かった。


* * *


琴音・狩也・コロロ
『 トリック・オア・トリート!(きゅるる きゅる きゅいー!)』

イグニス
「――おう、来たか。海賊相手に強奪たぁいい度胸してんじゃねーか」

琴音
「あはは、悪い顔――。
 これじゃあどっちが悪戯しに来たかわからないよ」

狩也
「......なんか意外。
 イグニスってこういうこと、恥ずかしがってやらないと思ってた」

イグニス
「そりゃお互い様だっての。
 つか仮装してパーティーに参加した時点で、もう恥も何もねえだろ。
 ......つーわけで琴音、そのカゴ前に出せ」

琴音
「あ、うん」

言われたとおりにカゴを差し出せば、
イグニスが近くに置いていたお菓子をたっぷりと入れてくれた。

イグニス
「こんなモンか。
 ......女の喜ぶモンなんてわからねえからよ。
 とりあえず、無難にクッキーにしておいたわ。
 初っ端から大きいモン渡しても荷物になるだろうしな......」

琴音
「ありがとう、イグニス。あとで狩也くんたちと頂くね」

イグニス
「......ん。
 今日は料理の準備とかで走り回ってたしよ、
 これ食いながらゆっくり休んどけ――」

コロロ
「ぎゅあーーー!!」

狩也
「うわ......!?」

突如、狩也くんに抱かれたコロロが、
威嚇するように短い両手を上げ......イグニスを見上げる。

イグニス
「ん............?
 んだよコロロ、いきなり唸り出したりして。
 オレの背後に潜んでるドローミの野郎でも見つけたか?」

狩也
「......その想像、
 ハロウィンの怪物たちより何十倍も
 恐ろしいと思うんだけど」

コロロ
「ぎゅあー! ぎゅあー!」

琴音
「............」

......これ、もしかして......。

琴音
「イグニス、ちょっと......」

威嚇を繰り返すコロロを見てピンと来た私は、
そっとイグニスの耳に耳打ちした。

イグニス
「! ああ、なるほどな......。わかった、任せとけ」

私の言葉に頷いたイグニスは、じっとコロロを見下ろすと。

イグニス
「――おー、怖え怖え。
 こんな恐ろしいまじゅ......じゃねえ、ゴーストは初めて見たぜ。
 さすがのオレも悲鳴を上げて逃げちまいそうだ」

琴音
「うん、そうだね。今日のコロロは、怖くてかっこいいよ」

コロロ
「きゅっ、きゅるー♪」

言いながら、
お菓子の代わりに大きな掌で撫でてくれるイグニスに、
悪戯が成功したコロロはご機嫌に笑ったのだった――。


* * *


琴音・狩也・コロロ
『 トリック・オア・トリート!(きゅるる きゅる きゅいー!)』

少しだけ重くなったカゴを手に、今度はイルの部屋へとお邪魔する。
だが、すぐに返事はなく――。

イル
「..................」

イルことフランケンシュタインは、
部屋の中央にあるテーブルで、何やら集中して作業をしていた。
大きな声を上げて入った私たちの存在にも、気づいていないらしい。

狩也・琴音
「............?」

何をしているのかと思い、そっと後ろに近づいてみれば。
包帯を巻いた彼の腕はぷるぷると震えていて......。

イル
「......! ようやく完成しました......!」

琴音・狩也
「!?」

勢いよく立ち上がった彼に危うく激突しかけ、私と狩也くんは仰け反った。

イル
「――......?
 ......おや、琴音に狩也......それにコロロも、来ていたのですね?」

琴音
「もしかして乙女ゲームのプレイ中だった?」

狩也
「だとしたら、邪魔しちゃってごめん」

イル
「――いいえ、そんなことは。
 ......むしろあなたたちの来訪に備えるための、
 準備をしていたのです」

琴音
「準備?」

イル
「ふふ――見てください、この――私の渾身の作品を......!」

じゃん、とイルが誇るように示したテーブルの上には、
コウモリなどを模した砂糖菓子が乗っている、
愛らしいカップケーキがあった。

コロロ
「きゅー!」

琴音
「もしかしてこれ、イルが作ったの......?」

イル
「はい――と言いたいところですが......」

イル
「あいにく菓子作りは不得手なもので......。
 ミシェルたちに手伝ってもらいつつ、
 買ってきたカップケーキをデコレーションしてみました」

どうですか? とイルは嬉しそうにカップケーキを指差した。

イル
「ハロウィンらしいでしょう?
 ことごとく失敗し、没となったケーキを完食すること12回......。
 ここに来てようやく、完成させることができました。
 ......二人の訪問に間に合って、本当によかったです」

狩也
「ちゃっかり全部食べてるあたり、イルらしいよね......」

琴音
「うん、でも......私たちのために、ずっと頑張ってくれてたんだね」

一生懸命作業をしているイルを想像するだけでも、心が温まる。
イルは傍に置いていた包みにカップケーキを入れ、
改めて私たちへと差し出してくれた。

イル
「――どうぞこちら、受け取ってください。
 琴音にはいつも、美味しい甘味を作って頂いていますから。
 私からもお礼がしたかったのです」

琴音
「――ありがとう、イル。
 とっても可愛いよ、食べるのがもったいないぐらい」

イル
「その気持ちはとても嬉しいのですが......。
 せっかく飾り付けたのですから、
 ぜひとも味わって頂きたいです......」

琴音
「あはは、そうだね。
 くり抜いたかぼちゃも、まだ残ってるし......。
 イルが気に入ってくれたかぼちゃのプリン
 また作ってあげるからね」

イル
「はい......! 今から楽しみにしています!
 ――良きハロウィンを!」

受け取りながら言えば、イルは天使のような微笑みで笑ってくれた。


* * *


カップケーキを崩さないよう、慎重にカゴの中に入れて、
イルの部屋の外へと出れば......。

凛堂
「――や。そこの可愛いおばけトリオさん?
 お医者さんが処方した、不思議な薬はいかがかな?」

琴音
「! 凛堂さん......」

琴音・狩也・コロロ
『 トリック・オア・トリート!(きゅるる きゅる きゅいー!)』

白衣をまとう凛堂さんが、私たちを出迎えてくれた。

凛堂
「――はい、トリック・オア・トリート。
 ミシェルからの手紙、読んでくれたみたいだね。
 ――お菓子を渡す側から、受け取る側に回った気分はどうだい?」

琴音
「ちょっとくすぐったいですけど......とっても楽しいです。
 ......そういえば昔、おじいちゃんと一緒に暮らしている頃も、
 仮装をしてお菓子をねだったなぁ......」

狩也
「へえ......ちなみになんの仮装をしたの?」

琴音
「確か......コロロと同じ、ゴーストだったかな。
 真っ白なシーツを被ってね、おじいちゃんが寝るまで
 【うらめしやー】って驚かせてた......ような......」

凛堂
「はは、若干日本風が混ざっちゃってたんだね。
 ――それじゃあ僕も、可愛いゴーストだった君へ、
 美味しいお菓子のプレゼント」

差し出された掌。そこには愛らしい包みに入ったキャンディが乗っていた。

琴音
「ありがとうございます、凛堂さ――」

と、受け取ろうとしたら。

???
「――キャンディだけではないであります!」

琴音
「!」

彼の腕をぴょんと伝い現れた、小さな――否、小さすぎる手。
まさかと思い顔を上げれば――。

琴音
「テンちゃん......!」

テンちゃん
「お久しぶりであります、琴音殿ぉー!」

思わぬ再会に、わ、と空いた手でハイタッチ。

狩也
「テンちゃんって......天咲島にいた、クレーレイ族?」

凛堂
「そそ、ちょうどクーレイ族の生態について聞き取り調査をするために、
 GPMに招いていてね。
 今回のハロウィンパーティーのことを話したら、
 ぜひ琴音ちゃんに会いたいって」

テンちゃん
「実現させてくれた凛堂には感謝感激であります!
 無論、土産も用意しているでありますよ!」

言ってテンちゃんは、
持っていた小さなグラスを私に差し出してくれた。

テンちゃん
「新鮮なぶどうを丹精込めて絞り作った、ぶどうジュースであります!」

琴音
「え、絞っ......え?」

狩也
「一人だけやけに本格的だ......」

凛堂
「こう見えて料理上手だからね、彼......。
 で......はい、これは狩也くんの分のキャンディ。
 素敵なお姫様が、悪戯好きなおばけたちにさらわれないよう、
 エスコートをしっかり頼むよ――?」

狩也
「......当然。任せといて。でも――」

凛堂
「......?」

狩也
「......凛堂さんだって、
 今日ばかりは琴音を狙う悪戯好きのおばけだから、
 おれにとっては警戒対象」

凛堂
「――......はは、これは一本取られたな。
 うん、そうだね......僕のこともしっかり牽制しつつ、
 護衛を頼むよ」


* * *


搾りたてのジュースはとても美味しく、喉を潤した私たちは――。
残る二人のうち、一人がいるだろう心当たりを探すべく、裏庭へと出た。

琴音
「!」

花壇に咲いている花を見つめる、大きな後ろ姿へと――そっと近づいて。

琴音・狩也・コロロ
『 トリック・オア・トリート!(きゅるる きゅる きゅいー!)』

カヌス
「......!?」

――ぼ、とかぼちゃの中で燃え盛る炎の色が変わる。

カヌス
「何かと思えば、琴音たちか。
 その挨拶は、何度聞いても未だ慣れぬな......」

琴音
「今日限りの挨拶だからね。
 ......実は私も言う度に、ちょっと噛みそうになってたり」

カヌス
「ふふ、愛らしい失敗だな」

コロロ
「きゅー!」

狩也
「カヌスがおれたちの気配に気づかないなんて、珍しいね?」

カヌス
「うむ。少しばかり、花壇の様子を見ていてな。
 して......他の皆から無事菓子はもらえたのか?」

琴音
「うん、ばっちり。残るはカヌスとミシェルだけだよ」

カヌス
「......問題なければ、誰から何を受け取ったのか聞いても?」

琴音
「イグニスからはクッキー、イルからはカップケーキ、
 凛堂さんからはキャンディをもらって、
 テンちゃんにはぶどうジュースをごちそうになったかな」

カヌス
「そうか――」

ほ、とカヌスが息を着く気配がした。

琴音
「他の人からのお菓子が、どうかしたの?」

カヌス
「うむ......
 実は各々何を用意したのか、教え合っていなくてな。
 品が被ってしまわないかと――いささか不安だったのだが......。
 どうやら我の杞憂だったようだ」

そう言ってカヌスが漆黒のマントから取り出したのは、
鮮やかなオレンジの色に染まった、一輪の花だった。

カヌス
「その......行事の方針を考えれば、
 本来は甘味を渡すべきなのだろうが......」

カヌス
「......ふと立ち寄った花屋で、この花を見かけたとき。
 貴女によく似合うだろうと思い――つい手にとってしまった。
 凛堂やミシェルたちにも相談したのだが、
 『これだ』と思ったものを渡せばいい......と、背を押され......」

一歩歩み、カヌスは私の耳元へと花をさしてくれる。

カヌス
「......ああ、やはり......
 今日の貴女の衣装にも、似合っている。
 いや......この衣装だからこそ映えるのだろうか......?」

カヌス
「こんな愛らしい人外にならば、
 悪戯をされても許してしまうだろうな......」

琴音
「そ、そう......かな......?」

な、なんだか......悪戯をしようとしていたはずなのに、
逆にからかわれている気分になってきた......。

狩也
「......ちょっと。おれとコロロの前で惚気けないでほしいんだけど」

コロロ
「きゅー......」


* * *


狩也くんの言葉に、
かぼちゃをピンク色に照らしたカヌスから更に数輪受け取り、店内へ。

すると、いつものカウンター席に......。

ミシェル
「――おかえり、ふたりとも。誰か一人ぐらいには、悪戯できた?」

魔王――否、今日だけは死者の国の王であるミシェルが、
珈琲カップを片手に、優雅に腰をかけていた。

琴音
「ふふ......それが全然。
 皆しっかりお菓子を用意してくれたから」

狩也
「まあ、用意してる前提でのイベントだしね......」

コロロ
「きゅー......」

ミシェル
「――おっと、それは残念。じゃあ俺相手に悪戯してみる?」

琴音
「例えば......?」

ミシェル
「そう、だね~......。
 俺がギブアップするまで思い切りくすぐってみる、とか?」

狩也
「......ミシェル、くすぐりとか効かなそう」

ミシェル
「そんなの、やってみないとわからないでしょー?」

冗談っぽく笑って、ミシェルは手元の珈琲を飲み干した。

ミシェル
「でも――せっかくのハロウィンなわけだし?
 やっぱり俺も『アレ』を聞いておかないと、ね?」

琴音
「――うん、そうだね。
 仮に悪戯をするとしても、
 ちゃんと言っておかないと落ち着かないし」

狩也くんと同時、精一杯怖そうなポーズを取って。

琴音・狩也・コロロ
『 トリック・オア・トリート!(きゅるる きゅる きゅいー!)』

最後の『トリック・オア・トリート』を、最強の魔王さまへと笑顔で告げた。

ミシェル
「――おー、様になってるね~!
 いっそこのまま三人とも、
 魔界に連れ帰って魔王軍にスカウトしたいぐらい」

狩也
「やだよ。魔界に行ったら、毎日がハロウィンみたいなもんじゃん」

コロロ
「きゅー!」

ミシェル
「――あっはっは、それもそっか。
 琴音の珈琲を魔界で飲めるようになる、
 絶好のチャンスだと思ってたんだけどな~」

カップを置いて笑うミシェルに、私も微笑んだ。

琴音
「それで......どうするの、ミシェル?
 悪戯を受けるか、それとも――」

ミシェル
「ん~~~。しょーじき......
 どんな悪戯かめっっっちゃ気になるトコだけど?
 ここは最年長者として――ちゃんと期待に応じないとね?」

パチンと彼が指を鳴らせば、私たちの目の前に――大きなキャンディが現れた。

琴音
「わ、可愛い......!」

ミシェル
「......でしょ?
 ちょーっと、子供っぽいかなと思ったんだけど......。
 二人ともまだ10代だし、
 たまには童心に帰れるものも贈るのも悪くないかなーって」

琴音
「確かに......。
 こういう飴を買う機会はめったにないから......。
 なんか、ちょっとドキドキするね?」

狩也
「......否定はしない。
 漫画に出てくる奴そっくりで、なんかテンション上がる」

ミシェル
「お、好感触――?
 ならもう一つ......
 ゾンビの王からとっておきのプレゼント――ってね!」

最後の仕上げとばかりに、ミシェルがもう一度指を鳴らした。

弾ける音と共に、空気が震えるような気配がして......。

――光と共に。
店内が一瞬で、【人ならざる者が住まう世界】へと変わった。

琴音・狩也
「!!!」

光の泡が舞う世界で宙に浮くのは、
ジャック・オ・ランタンやコウモリ、おばけのぬいぐるみたち。

まるで生きているような動きをしているそれらは、
私たちの周囲をくるくると踊り始めた。

琴音
「綺麗......」

狩也
「すっご......! え、ミシェルってこんなこともできるの?」

コロロ
「きゅ、きゅー!」

自分と同じ可愛いゴーストの出現に同族意識が芽生えたのか――。

コロロ
「きゅー!」

コロロが狩也くんの腕から飛び出し、近くのテーブルへと着地。
浮いているゴーストへと手を伸ばしてはしゃぎ出してしまった。

狩也
「あ、こら、コロロ。
 遊ぶのはいいけど、おとなしくしてろって――!」

身を乗り出してはしゃぐコロロを追いかけ、慌てて監督する狩也くん。
一方で私は――いつもとは違うアンシャンテの様相に、
一人見惚れ続けていた。

ミシェル
「......気に入ってくれた?」

そんな私へと、とても優しい眼差しのミシェルが尋ねる。

琴音
「そんな......気に入ったなんて言葉じゃ、表せないぐらい」

琴音
「......素敵なハロウィンをありがとう、ミシェル。
 皆にも――後で改めてお礼を言わないと」

ミシェル
「ふふ、喜んでくれたなら、俺も練習したかいがあったよ。
 こういうチート魔法は――ハロウィンに使ってこそ、だからね」

ミシェルは席からゆっくりと立ち上がると。
マントを翻しながら、その場で優雅に一礼し――
自分の言葉を噛みしめるようにして、告げた。

ミシェル
「――俺たちは本来、
 決して交わらぬ――
 【人】とその【外】として生きる者」

ミシェル
「ですが――今日このときだけは。
 人ならざるもの同士として、
 君に非日常の世界をお届けしましょう」

ミシェル
「......普段マスターさんとして頑張ってる分、
 今日ぐらいは無邪気な人外になりきって――。
 好きなだけはしゃいで悪戯しちゃおう――ってね?」

琴音
「うん......!」

ちょっと不思議で賑やかな、今日という素敵なハロウィンパーティーを......

私はこれからも、永遠に忘れない――。


終わり

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