ワリコミ! 幻奏喫茶アンシャンテ(ハロウィンver)



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『 トリック・オア・トリート! 』










――10月31日。


それは。


世界が。


人間界が。


【ハロウィン】という行事に、賑わう一日。
それは各世界最強のラスボス人外たちが集う、
この喫茶アンシャンテがある街も例外ではなく――。



カヌス
「............」

ミシェル・イル・イグニス・凛堂
「「「「............」」」」

カヌス
「み、皆してなぜ我をそこまで凝視する?
 何かおかしいだろうか......」

ミシェル
「ん~、あっはっは。
 ――いやまあ。
 おかしいかおかしくないかって質問されたら、
 何もかもが、おかしいね?」

凛堂香
「出オチ感がすごい......
 ジャック・オー・ランタンって
 こんなのだったっけ......?」

イル
「いえ。以前見かけた参考資料と比べますと、
 かなりの差異があるかと。
 ――控えめに言いましても。
 かぼちゃの魔人が目と口から炎を噴き出している......
 という構図にしか見えませんね?」

イグニス
「つーかカヌス。
 お前その使ったかぼちゃ、
 中身も一緒にあとで美味しく頂けよな。
 食いモンを粗末にするんじゃねえぞ」

カヌス
「う、うむ、無論だ。
 彼女が帰ってきたら、
 パンプキンパイでも焼いてもらうか......」

カヌス
「しかし......
 そんなに出来が悪いだろうか?
 我としては渾身の仮装のつもりだったのだが」

イグニス
「出来とかいう以前に、お前の場合は
 それしか選択肢がなかっただけだろ......」

凛堂香
「あはは......
 まあ、これはこれで、
 新鮮というか――人目を引くとは思うけどね」

イル
「そういえば、
 マスターはまだ戻ってきませんが......
 商店街の会議とやらが、長引いているのでしょうか?」

ミシェル
「だろうねぇ。
 この辺りのお店総出でハロウィンイベントやるらしいから。
 子どもたちの誘導ルートとか、
 詰める話は山のようにあるだろうし」

イグニス
「ち......アンシャンテの存在は隠せても、
 この街に住んでるっつー事実を隠せねえのは、
 めんどくせえな。仮装なんざ興味ねーっての」

カヌス
「だが、今回のこういった催しへと
 参加を勧めてくれたのも、
 彼女からのせっかくの気遣いなのだ。
 それを無碍にするのは我としては賛成しかねる」

イグニス
「......わ、わかってるっつーの。
 別に嫌とは言ってねえだろ?」

イル
「ふーむ......
 仮装に関してふと思いついたのですが。
 そもそも私たちの場合、仮装をせずとも、
 認識阻害を解いた上で、本来の姿――
 つまり人外の姿に戻れば、万事解決なのでは?」

凛堂香
「そ、それは僕が上層部から
 減給される未来しか見えないから、
 勘弁してくれる......?」

ミシェル
「あっはっは。
 ま~、凛堂の残業時間と懐事情はともかくさ。
 郷に入れば郷に従え......とはちょっと違うけど。
 せっかくのイベントなんだし、
 ここは素直に楽しまないと損――ってね」

カヌス
「......うむ。
 それに衣装も用意されているのだ。
 お前たちも、彼女が帰宅する前に着替えるといい」

イグニス
「........................はぁ、わーったよ。
 ただ......お前のそのかぼちゃ魔人を見てると、
 自分にどんな衣装がチョイスされたのか、
 めちゃくちゃ不安だわ......」



* * *



――30分後。
まず着替え終わったのは。


ミシェル
「――トリック・オア・トリート!
 お菓子をくれないと、
 人間界を屍の世界に染めちゃうぞーーー?
 ......なーんてね」

イル
「トリート・オア・トリート!
 悪戯はしませんから甘味をください!
 可能ならば、アイスを!」

イグニス
「おい......そこのアホ堕天使。
 それはただの『たかり』っつーんだ。
 菓子しか選択肢がねーじゃねえか」

イル
「ダメなのですか......?
 特に悪戯はしたくないのですが――」

凛堂香
「はは。ダメじゃないけど、
 随分と優しいフランケンシュタインだね。
 魔王さまの場合は......
 お菓子をあげても悪戯されそうだ」

ミシェル
「おや、失敬な。
 約束は守りますとも。
 そーれーに?
 今日の俺は魔王じゃなくて、ゾンビの王!
 ――ガブッと噛んで、ゾンビ仲間にしちゃうぞ~★」

カヌス
「ふふふ......
 ずいぶんと楽しげだな、ミシェル」

ミシェル
「まあね。
 皆でワイワイ騒げるのって、楽しいじゃない。
 あとは、ホラ。
 単純に仮装なんて滅多にする機会がないし......
 せっかくなら徹底的になりきったほうが、面白いでしょ?」

凛堂香
「それにしても......
 なんだか威厳もあるし、ミシェル。
 いっそずっとその姿でいたほうが、
 普段より魔王っぽいかもしれないよ」

ミシェル
「――え? 何だって?
 ハラワタ引きずり出されたい?
 もー凛堂ってば。
 それくらい、いくらでもやってあげるよー★」

凛堂香
「言ってないよ!?」

イル
「――――(はぐはぐ)」

イグニス
「って。
 お前は突然何食ってんだよ......
 そのマフィンどっから出てきた」

カヌス
「――はっ!?
 イルが菓子を欲していたので、
 つい戸棚から取ってきてしまった......」

ミシェル
「ははは、過保護かぼちゃ魔人だね」

イグニス
「オメーが言えた義理かっての」

イル
「おぃひぃえふ」

イグニス
「食べながら喋んな!」

凛堂香
「ふふ。さて、じゃあ......
 イルがマフィンを食べてる間に、
 今度は僕らが着替えてこようか? イグニス」

イグニス
「はぁ......いいけどよ。
 オレの衣装、地味にかさばるわ、
 小物は多いわ......
 マジでなんの仮装なんだ? これ......」



* * *



戻ってきたイグニスが身にまとっていたのは――。

ミシェル
「............おーーー......」

カヌス
「おお......」

イグニス
「――ん、んだよ。
 どういうリアクションだよ、それ。
 別に......そこまで変な格好じゃねえだろ」

カヌス
「いや......意外だと思ってな」

ミシェル
「――うんうん。
 俺はてっきり、
 狼のきぐるみあたりかなー......って」

凛堂香
「僕も同じく。
 狼男の類だと......」

イグニス
「そりゃ焔狼のイメージそのままじゃねえか。
 ......まあ、なんだ。
 あいつなりに『仮装』になるように、
 なるべくイメージを外そうとしたんじゃねえの」

イル
「私はよく似合っていると思いますよ、イグニス。
 海賊といえば粗暴。まさにあなたにぴったりと――」

イグニス
「――よーし、箱入り。
 今日から食後のデザートは全部オレが食ってやるよ。
 海賊といえば『略奪』だもんなあ?」

イル
「......!? きょ、拒否します!
 称賛を送ったはずなのに、なぜ......!?」

ミシェル
「けど海賊衣装って、
 男のロマンがあるよねえ。
 普通にかっこいいと思うし」

カヌス
「――して。凛堂のほうは......?」

凛堂香
「............」

ミシェル・カヌス・イグニス・イル
「「「「..................」」」」

凛堂香
「おや......
 カヌスの時と同じような反応だけど――」

イグニス
「......! アレだな。
 『心労を重ねすぎて、
  やべえクスリに手を出したやつ』だな!?」

ミシェル
「それだ!」

イル
「! それですね」

カヌス
「......おお。それしか考えられぬ」

凛堂香
「――違うから。
 というか僕の心労の原因は君たちだからね?
 まったく......科学者の衣装だよ、これは」

イグニス
「科学者ァ?」

凛堂香
「そ。
 たぶん同僚の御門のイメージからとって、
 彼女が用意してくれたんじゃないかな」

イル
「なるほど。いわゆる、
 マッドサイエンティスト――というものですね?」

カヌス
「うむ。言われてみれば、確かに。
 まさに御門を連想させる衣装だな......」

イグニス
「つかよ。
 その注射器に入ってる液体って――」

凛堂香
「ああ。これは果物ジュースだよ。
 子供たちが喉乾いたときに配れるように――って。
 中も自由に入れ替えられるみたいだよ」

ミシェル
「へー、最近の小物は凝ってるねー。
 昔のハロウィンなんて、
 シンプルな仮装が多かったのに......」



* * *



などと。
互いの衣装の感想を述べ合ううち、
時間は過ぎていき――。

カヌス
「ん......随分と時間が経ったな。
 そろそろ彼女も帰ってくるのでは――」

ミシェル
「......あ、そうだ。
 せっかくちょうど着替え終わったわけだし。
 このまま皆でお出迎え――ってのはどう?」

イグニス
「あ? そりゃ、つまり......
 ............あ~......
 ............恥ずいっつーか......」

凛堂香
「はは、でもきっと彼女も喜んでくれるよ?」

イル
「ええ、私もそう思います。
 マスターはハロウィンメニューの考案など、
 今日という日に向けて、張り切っていましたから」

カヌス
「......うむ。
 内心、今日を迎えるのを心待ちにしていたのだろう」

イグニス
「わ、わかってるっての。
 ......しゃあねえ......
 やるなら思いっきり――
 海賊っぽくやってやらあ!」

ミシェル
「オーケーオーケー。
 その意気だよ。
 ――と、噂をすればなんとやら」

まっすぐにアンシャンテの扉へと向かい、
それを開こうとする見慣れたシルエット。

ミシェルたちは彼女たちを待ち構え、

ドアべルが鳴り響くと同時に――。



『 トリック・オア・トリート! 』



終わり
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ハッピーハロウィ~ン!
ということで、
描きおろしイラスト、
そして書きおろしSS!

いかがでしたでしょうか。
ユウヤや中山とハロウィンやろうぜ!ってなったときに、
カヌスはもうコレしか考えられねえだろ!?ってね(笑)

いやもうみんな最高かな?

イグニス → ハイパーかっこいい

カヌス → かぼちゃかっこいい
ミシェル → スタイリッシュかっこいい
イル → カワ(・∀・)イイ!!かっこいい
凛堂 → 危険な香りかっこいい


かぼちゃかっこいいってなんだろうね?
いや嘘嘘、普通に強そう。
夜道で会ったら泣いて土下座する。 <ワレハソンナコトシナイゾ

賑やかなアンシャンテのハロウィンを
ぜひ、一緒にその場にいるつもりで!
楽しんで頂けましたらば幸いです。



琴音は!? 狩也は!? コロロは!?



きっとそういうお声もあるでしょう。
......ふ、ふふふのふ。( ̄▽ ̄)


今後とも作品が受けた皆様からの愛情に、
少しでもお返しができるよう、
これからも精一杯努めていきますので。

何卒よろしくお願いいたします!

(一ジョー)

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