オトメイトスタッフブログ

Vingt-quatrième épisode(第24話)

TOP24.jpgオトメイトスタッフブログをご覧の皆様。
こんにちは、【薔薇に隠されしヴェリテ】の進行を担当しております、
アイディアファクトリーの立松と申します!

突然ですが、皆様は「シンデレラ」と聞くと何が思い浮かびますか?
継母、意地悪な義姉妹、魔法使い、カボチャ、ガラスのくつ......

継母に虐められていた主人公が、魔法の力を借りて舞踏会へ行き、一国の王子に見初められて幸せになる事から成功物語の代表となっていますが、ある意味、本作もシンデレラストーリーかもしれません。

まぁ、2人の大きな違いと言えば、シンデレラには "魔法" があり、リーゼには 『身代わりの薬』 があった事でしょうか――

『身代わりの薬』は、ハプスブルグ家(アントワネット様の実家)に代々伝わる薬ですが、果たして薬はどうやって、誰によって、作られたのか......ヴェリテは依然として謎のままですが、もしかしたら "魔法" の力みたいなものが関わっているのかもしれませんね。

そんな真実に少し迫ったような? 迫っていないような?

ヴェリター必見の――発売直前記念! 高木氏書き下ろしスペシャルショートストーリーユウヤ氏の挿絵イラストを交えてお届けしています♪

発売前、最終の今回もハラハラドキドキ・アバンチュールな本作の魅力をたっぷりとお伝えしていきます!

Vingt-quatrième épisode(第24話)のはじまりはじまり~!

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昨日8/18~カウントダウンが開始されていますよ!
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◆雑誌掲載

電撃Girl'sStyle 9月号(8月9日発売号)に【薔薇に隠されしヴェリテ】の情報がたっぷりと掲載されています!
発売記念として、マリアージュ感たっぷりなユウヤ氏の見開き描き下ろしイラスト!
その他、高木氏書き下ろしSSやプレイレポート、開発スタッフのコメントなど、見どころ満載です! ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

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発売直前記念!ということで、冒頭でも予告させて頂いた......
高木氏による書き下ろしスペシャルショートストーリー&ユウヤ氏挿絵イラストを、早速お届けしちゃいます★

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「あの本、何処にやったかなぁ......」

 普段から整理整頓を心掛けていないダントンは、彼が何か探し物をする度に、より一層掃除を困難なものにしていった。「散らかっているように見えるけど、何処に何があるか、ちゃーんと分かっているんだって」と彼は言うだろうが、さすがにここまで散らかっては本人も把握出来ないだろう。

「おい、この前借りた......」

 そこに、ノックをせず突然部屋に入って来た男が、乱雑な部屋を見るなり怪訝そうな顔をした。

「引っ越しか?」
「違っ......あーっ! お前が持っていたのかよ! ったく......探したんだぜ?」
「俺に貸していた事を忘れていたお前が悪い」
「そりゃそーだけどよぉ......はぁ、よかった。もう読んだのか?」
「読んだから持って来たんだ。やはり下らない寓話だった」

 ロベスピエールから予想していた通りの感想を聞くと、やれやれといった面持ちで本を受け取る。ロベスピエールが何か(または誰か)を褒めるなんて事は、二人が出会ってから一度もない。そもそも彼は他人からどう思われるか気にならないようで、リーゼと出会った時などは道を尋ねられただけなのに敵意を露わにしていた程だ。

「読みたいっつーから貸してやったのに......ま、いいけどな。それにしても珍しいよなぁ、お前がこんな本を読みたいなんてさ。お前からすりゃ下らないハナシかもしれねーけど、女ってのはこういう......」

 ふと何かを思い付く。

「こういう......何だ?」
「あ~、そういうことネ。納得」
「一人で納得するな。どうせお前の勘違いだと思うが」
「はいはい、分かったって。ホント、素直じゃないねぇ~」

 ロベスピエールは深いため息を吐いてから、下らない寓話を借りた理由を言おうとするが、ダントンが手を広げてそれを制止した。

「いいからいいから。理由なんて言わなくても分かってっからさ。あの子に何かしてやるんだろ? 貴族みてーなドレスを買ってやって、舞踏会に招待して......」
「馬鹿か?」

 結局借りた理由を言わずに部屋を出て行った。

「......あれ、外れた? となると他の理由か......うーむ、全然思い付かねぇな。普段は自分の役に立つ本しか読まないあいつが、何でまた『サンドリヨン』なんか読む気になったんだ?」

 『サンドリヨン』とはシャルル・ペローが執筆したもので、1697年パリにて出版された。灰かぶりの娘(シンデレラ)と呼ばれる貧しい少女が、魔法によって舞踏会に参加し王子と結ばれるという、いわゆる夢物語だ。

「......ほいよ。これ、前に読みたいって言ってただろ?」
「あっ......! ありがとう御座います! 覚えていてくれたんですね!」
「いやぁ~、実はさっき思い出したんだ。んで、部屋ん中探していたら......ご覧の有様って感じかな」

 ダントンはそう言うと申し訳なさそうにリーゼに部屋を見せた。今朝掃除したばかりなのに、まるで泥棒に入られたかのような散らかりようだ。しかし自分に貸す本を探す為に散らかしたので(結果そうなった)責める訳にもいかない。

「あ、言い訳聞いてくれる? 探しても探しても無いからおっかしいなぁ、と思ってさ。そしたらロベスピエールが部屋に入って来て、そいつを返してくれたんだ。オレ、あいつに貸した事すっかり忘れちまってて......」
「え? ロベスピエールさんが......?」
「意外だろ? ほら、この前リーゼちゃんからこの本の話が出ただろ? あの後だったかな。オレの部屋に来るなり『サンドリヨン』を貸せって言ってきて、勝手に探して勝手に持って行きやがったんだ。理由を聞くヒマもナシさ」

リーゼは『サンドリヨン』の物語が好きで幼い頃から何度も読んでいたが、フランス語の『サンドリヨン』はまだ読んだことがなかったので、フランス語の勉強がてら、今一度読み返してみようと思っていた。ある日の夕食時、その話をした所、ダントンが持っているので見付け次第貸すと言ってくれたのだ(もちろん部屋の掃除を任されているリーゼは所在を知っていた)。同席していたロベスピエールは散々馬鹿にしていたのだが......

「次の日理由を聞いたら、たまには下らない本を読んで気分転換してみたくなったから、だとさ。オレはてっきりリーゼちゃんに......」
「私......?」
「いや、何でもねーよ。本当に気分転換で読んだだけかもしれねーし......あ、そっか、そうだ!」
「どうしたんですか?」

 ロベスピエールがしなければ自分がすればいいと思いつく。

「だよな......だってリーゼちゃん、『サンドリヨン』を気に入っているっ言っていたし、やっぱ女の子ってああいう世界が......」

 置いてきぼりのリーゼはきょとんとしていた。

「あ、悪ぃ! それ、返却ならいつでもいいからさ」
「ありがとう御座います......」

 リーゼが部屋から出ると、羽根ペンを取り手紙を書き始めた。理由を報せず必要な物だけを送って貰うように、簡潔に、分かりやすく。

「フェルゼンには絶対頼めない......とくれば、やっぱジャックかな」

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「あのー、誰か居ませんかー?」

 数日後、庶民の宿フォルタン・ホテルに一人の貴族がやって来た。

「......まぁ、フェルゼン様! お久し振りですわ!」
「お久し振りです。おや、以前お会いした時より若返ったのでは? 何かいい事でもありましたか?」
「くすっ、いやねぇ、褒める相手を間違っているわよ」

 宿の主、クロエに礼儀正しく挨拶を済ませると、持参した荷物を床に置いた。普段は力仕事など絶対にしないし、そもそも貴族が荷物を持つ事はない。だが今回の荷物は特別なので彼自身が持参する事にした。

「それで、今日は何のご用かしら?」
「 "とある方"から、これをここに運ぶ様にと頼まれましてね」
「とある方? ああ、ジャックね。何も気を遣わなくてもいいのに。こんな事がジャックの周りの人にばれたら大変ではなくて?」

 ジャックとはフランス王太子の別名で、庶民に扮しパリに遊びに来る際使う名である。元はダントンが言い出した名で、彼の父親(ダントンが幼い頃亡くなっている)、ジャック・ダントンから取ったものである。ちなみにダントン自身も父の名を持ち、ジョルジュ・ジャック・ダントンと言う。

「普通は殿下の心配より、この宿の心配をするものではありませんか? 貴族がこうして荷物を抱え、しかも庶民の宿に入っている訳ですし。あ、いい男というのも追加ですね」

 同じ台詞をロベスピエールが言うと腹が立つが、フェルゼンが言うと不思議と怒る気になれないし、それどころか笑顔で返してしまう。

「相変わらずむかつく奴だな」

 人を不愉快にさせる天才、とも言うべきロベスピエールが二人に声を掛けた。フェルゼンとクロエの二人は何とも言えない表情を交わすと、ロベスピエールを置いて、さっさとクロエの部屋へと移動しようとする。

「あ、おい! この荷物は何だ!? ジャックからか?」
「ええ、そうですよ。ダントン宛の荷物を、この私がわざわざ持ってきてあげたんです」
「あら、ジョルジュがジャックに頼んだ物なの?」
「らしいですね。中身には興味がありませんので聞いていませんが」
「俺は聞いていないぞ?」
「あなたには関係ないでしょうに。さ、参りましょうか。ところで......」
「ジョルジュなら今リーゼと一緒に買い物に出ているのよ。それまで二人でお茶でも飲みましょう」

 そして、二人が部屋に入るのを確認すると、ロベスピエールは箱を開けた。

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「殿下、例の荷物の件ですが......」

 鏡の回廊の窓辺に立ち、広大な庭園を眺めているフランス王太子。ダントンからラファイエット侯爵の所に届けられた手紙には、まるで商人に宛てた注文書の様な文面があった。

「理由が分からないのに品物だけを届けさせるとは、感心致しませんな」
「......あの衣装はあの者が着るのだろうか?」

 自分の忠告が王太子の耳に届いていない事を知ると、ため息を吐く。――偽の王太子妃ことリーゼは、身代わりとしての務めを終え、今はパリの安宿で生活をしている事は分かっていた。そして王太子が本物の王太子妃を受け入れる事が出来ず、リーゼに気持ちを寄せつつある事も分かっていた。分かっていないのはルイ王太子本人のみ。

「ラファイエット侯、舞踏会を二夜連続で開催しろとはどういう事だろうか?」
「直接本人にお確かめになればよろしいのでは?」
「そうするか。あと、手紙にあった、出来るだけ豪華な馬車を迎えに寄越せとあるが......あの宿の前に豪華な馬車が止まっては、パリ市民の反感を買うのではないか?」
「でしょうな」

 ラファイエットはこの会話の後、すぐにパリに向かった。やはり品物を届ける前に確認すべきだったのだと後悔した。しかも頼んだのは"あの"フェルゼンだ。何か起こっているに違いない。

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「......何でこんな所にカボチャがあるの?」

 買い物に出掛けていたリーゼとダントンが戻り玄関のドアを開けると、目の前の床に大きなカボチャと木箱が置かれてあった。

「お、おい! 何で開いているんだよ!?」

 騒動を聞きつけ奥の部屋にいたフェルゼンとクロエが出て来た。

「おかえりなさい。さっきフェルゼン様がそれを持って来て下さったのよ。ジョルジュ、ジャックに頼み事をしてはだめでしょう? あの方は王太子なのよ?」
「え? ジャックさんに......?」

 フランス王太子から届けられた荷物と分かり、リーゼは箱の中をのぞき込む。何故かカボチャだけ外に置かれているが、それ以外の物はまだ入ったままだった。

「おや、これは......」

 興味が無いと言っていたフェルゼンも、ドレスを見付けたとあっては無視出来ない。

「ったく......あーあ、これじゃ計画が丸つぶれじゃねーか......」
「ダントンさん、計画って何ですか?」
「じ、実はさぁ......」

 部屋に戻っていたロベスピエールは、リーゼの部屋から奪ってきた『サンドリヨン』を今一度読み返していた。あの箱に入っている物を見れば、ダントンが『サンドリヨン』を題材にし、リーゼの気を惹こうとしているのはすぐに分かった。そして彼は、これを読んだ切っ掛けを思い出す。

「シャルル・ペローか......」

 彼の記憶では、確か太陽王に仕えていた学者のはず。今から100年ほど前の事だ。

「それだけ地位も名誉もある貴族が、何故こんな庶民向けの話を書いたんだ? ......やはり確かめた方がいいな。そもそもこいつを読んだ切っ掛けは......」

 切っ掛けとなった疑問を解決するべく書店に向かう事にした。ロベスピエールの疑問は、既に一つの答えを導いていた。それを確かめなければならない。

「まぁ......素敵じゃない! ねぇ、リーゼ」
「え、ええ......嬉しいですけど色々と無理があるような......」
「ですよねぇ。だいたい『サンドリヨン』を題材に彼女を釣ろうとは......」
「釣らねーよ!」

 ルイに頼んだ大きなカボチャ、舞踏会用のドレス、装飾品に白い靴(透明の靴と注文していたが無い為代用品が入っていた)が箱に入っていた。もちろん『サンドリヨン』を再現するつもりなら足りない物は他にもある。

「あのー、ダントンさん、カボチャって何に使うんですか?」

 そこに、品物の理由を聞きに来たラファイエットがやって来た。

「失礼する。......何だ、揃っていたか」
「あら、いらっしゃい!」
「ジャックさん......!?」

 ラファイエット一人でパリに行くはずの予定が、ルイ王太子に行き先と理由を厳しく追及され、仕方なく連れてくる事になった。この場合立場はルイの方が上なので、ラファイエットが随行したことになるのだが。

「では理由について聞かせて貰おう」
「そ、そう怖い顔するなよなぁ......」

 一同はクロエの部屋で尋問を開始した。この隙にロベスピエールは自身の疑問を解決すべく、書店へ向かっている。

「......『サンドリヨン』? シャルル・ペローが書いた、あの物語か?」
「そのようですな」
「女性を口説くにはいい題材だと思いますが、カボチャって必要なんでしょうか?」

 フェルゼンの疑問はもっともだ。魔法がなければ実現しないのが『サンドリヨン』の物語だ。ここに居るルイ、ラファイエット、フェルゼンが相手であれば魔法は必要なく実現は可能だが、カボチャを馬車に変化させるとなると......

「だ、だからさ、魔法でちょちょいと......」
「魔法?」

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 久し振りに来たパリ、フォルタン・ホテル。ルイはリーゼと話す時間を見計らっていた。突然の外出の為泊まる訳にもいかないし、夕食までには戻らなければならない。夕食の際国王から、話があるから二人で摂りたいと言って来た為である。どうせ話題は世継ぎの事だろうが。

「......何か用か? 見ての通り俺は忙しい」

 ダントンへの尋問はラファイエット達に任せ、ルイは一人出席していないロベスピエールが気になり彼の部屋に来ていた。

「書物を読むのに忙しいのか?」

 王太子が部屋に来ているというのに、ロベスピエールは視線を向ける事なく借りて来た本を読みふけっていた。

「シャルル・ペローの書か」
「......ああ」
「先に言ってくれたら宮殿から持参させたのだが」
「何? あ......そうか! しまったな。その手があったか」

 太陽王と呼ばれるルイ14世に仕えていた者なら、その者について記述された書類が残されてあるはずだ。ロベスピエールは早速ルイに書類の手配を頼むと、借りて来た本を閉じて向かい合う。

「ジャック、お前は『サンドリヨン』についてどう思う?」
「感想か? 特にないが」
「中身の感想じゃない。......なぁ、変だと思わないか? あの太陽王に仕えた裕福な貴族が、庶民に夢を与える様な内容を書くと思うか?」
「そんな風に考えた事はなかったが、言われてみれば変だな。ラファイエットやそれ以外にも、民を気に掛けている者は居る。だがそれを態度で示す者は居ない。そなたはどう考えるのだ?」

 そう聞かれ、少し間を開けてロベスピエールが答えた。

「恐らく見たんだろうな。......"魔法"を」

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「それで、魔法とは?」

 ダントンは、身代わりの薬を使って外見が別人になれるなら、カボチャにも応用出来るのではないかと考えていたらしい。それを聞くとフェルゼンとラファイエットは思わず吹き出した。

「ええっ!? そ、それはちょっと......考えた事が無かったけど......」

 もしそれが可能だったら、アントワネットの身代わりはリーゼでなくても棒切れや雑草でもよかった、という事になる。もちろんその場合一言も喋る事は出来ないし、ただそこに在るだけの"モノ"になってしまうが。

「カボチャが馬車になるの?」
「なりませんよ」

 クロエの疑問に馬鹿馬鹿しく即答するフェルゼン。

「じゃー何か? フェルゼン、あんた試したのか?」
「試すまでもありませんって」
「ほらな、試してないじゃねーか! だいたい人間専用なんて誰が言ったんだよ?」
「あのねぇ、どうして薬と呼ぶのかご存じですか? 飲むからです。どうやってカボチャが薬を飲むんです?」
「そ、それは......」

 あまりの馬鹿馬鹿しい発想に、ラファイエットが席を立った。

「ま、待てよ! カボチャを切って中に染みこませるとか......な、何とかならねぇかな!?」
「何故そんな下らない事に懸命になる? 他にやる事があるだろう?」

 もっともな意見だ。今宿にいる男性陣の殆どが現実主義者だ。ロベスピエールは言うまでもなく、ラファイエットは自分の目で見た事しか信用しない。ルイもそうだ。噂や憶測が日々飛び交い、それが事の行く末を決めかねない宮殿での生活が長ければ長い程、虚構を信じなくなるのは仕方のない事なのだ。

ご婦人の相手に慣れているフェルゼンは、この中で一番の現実主義者と言える。自分の目で見たり確かめたりしても、真偽の結果はすぐに出さない。誰よりも疑い深いとも言える。彼が身代わりの薬についてどう思っているか......もちろん聞いただけでは信じていなかったし、目の前で実演されても信じなかった。だが彼は退屈が何より嫌いなので、敢えて疑うのを辞める事もある。

「楽しそうな内容なので是非協力して差し上げたい所ですが、そんな馬鹿馬鹿しい事をしようとするあなたの気持ちが気になりますねぇ......どうしてですか?」
「だ、だからさ......『サンドリヨン』みてぇな世界を作って、リーゼちゃんに喜んで貰おうかと......」
「私ですか......?」

それを聞いてもリーゼはダントンの気持ちが理解出来なかった。例え好意から来るものだとしても、喜ばせるだけなら他にも方法はあるのに。

「馬鹿には何を言っても無駄さ」

 二階に居たロベスピエールとルイが戻って来た。馬鹿にされる事は分かっていた為内密にしておきたかったのだが、ここまでばれてしまっては、甘んじてロベスピエールの言葉を受け入れるしかない。

「ねぇジョルジュ、一体どうしたの? 『サンドリヨン』の話題が出たから同じような境遇をこの子に体験させたい、だなんて......」

 気落ちしているダントンにクロエが優しく声を掛ける。他人にも自分にも興味がないルイ王太子も気になるようだ。

「ダントンに何かあったのか?」
「殿下、気にされる事は御座いません。そろそろお戻りになりませんと」
「ちぇっ、いいけどさ......」
「焦りは禁物ですよ。まぁ、分かりますけどね、あなたの焦る気持ち」
「別に焦っていたワケじゃ......焦っていたのかなぁ......」

 リーゼ、ダントン、ロベスピエールの三人がここで暮らしてもう随分経つ。ダントンがリーゼに対して抱く気持ちが恋なのか愛なのかは分からないが、一つ言えるのは、ダントンの中に明らかに焦りが生じていた。リーゼを"誰か"に取られたくないのだ。

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「ロベスピエールと何を話されていたのですか?」

 帰りの馬車の中、ラファイエットはルイに尋ねた。

「あの物語を執筆したシャルル・ペローは、我々と同じように "魔法"を見たのではないか、と言っていた。あの物語に書かれてある事は不可能かもしれない。だが全くそうとも言い切れないのではないか......とな」
「ほう......ではロベスピエールは、殿下のおっしゃる"魔法"とやらの研究でもしていたので?」
「そうではないが......」

 ルイは朱色に染まる空を眺めてこう言った。

「ラファイエット侯、この世界に不可能な事はないのかもしれないな」
「それはリーゼの事ですか?」

 その質問には答えず、再び空に視線を戻した。

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入り口に置かれていたカボチャは数日後、皆の食事と姿を変え、ドレスやその他の物は全て返却された。

「発想はよかったと思うんだよなぁ......」
「確かにな」

 その返事を聞いて驚く。

「無論、お前のしようとしていた事もその理由も、馬鹿にされて当たり前だ。だが......」

そこまで言うと、ロベスピエールはルイから取り寄せた書類を全て暖炉にくべた。

「俺はお前の様な奇想天外で奇抜な、馬鹿げた発想は出来ない」
「......それ、褒めてんのか?」
「ふっ......さぁな」
「その書類、何で燃やすんだよ? ジャックから取り寄せたヤツだろ?」
「知ったところでどうにもならない事なら、知らない方が面白いと思ってな」
「何だそりゃ?」

 ダントンはそれ以上聞かなかった。彼が取り寄せた書類が何なのか興味はあったが、ロベスピエールが知ったところでどうにもならないと言うなら、自分にとっても同じだと思ったからだ。

「ダントン、お前は本当にカボチャが馬車になると思っていたのか?」
「思っていた訳じゃねーって。ただ、試してみたかったっつーか......あの子をびっくりさせて、わぁ素敵! まるでサンドリヨンみたい~! なぁんて言わせてみたかったっつーか......」

 その台詞の途中辺りから、ロベスピエールは極力右から左へ聞き流すよう努めた。理解出来ない事を相手が言い始めた場合、彼はいつもそうしている。ダントンやリーゼの言うことにいちいち付き合っていては、何度馬鹿にしなければならないか。――この時焦りを感じていたのはダントンだけではなかった。ロベスピエールもルイと同じく、自身では自分の気持ちに気付いていない。

「そんな手を使わなくても普通に誘えばいいだろ?」
「誘うって......舞踏会に? 何処にそんな金があるんだよ? それに、オレはあの子と踊りたかったワケじゃねーよ」
「じゃあ喜ばせたかっただけか」
「そんな所かねぇ......」
「ふん、下らない事を考えるんだな」
「まぁね」

 それからしばらく、二人は黙って書類が燃える暖炉を眺めていた。

「夕食が出来ましたよー!」

 階下からリーゼが二人を呼ぶ。

「あいよー! さ、行こうぜ。どうせまた今夜もカボチャのスープかな?」
「またか......お前のせいだぞ?」
「まぁいいじゃねーか。食えるモンがあるだけマシなんだからさ」

 フランス語で書かれた『サンドリヨン』は結局リーゼが読む事はなく、ロベスピエールの部屋に置かれることになった。

~Fin~

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如何でしたでしょうか?『サンドリヨン』を巡って繰り広げられた日常の一幕は、ダントンのサプライズ演出からカボチャ料理のオンパレードに発展しましたが、どのキャラクター達も、リーゼを大事に思っているのが伝わってきますよね!表現方法は其々違いますが//

(私はカボチャの天ぷらが好きですが、きっとこの時代にはなかったと思いますので、カボチャのスープを極める事にします(笑))

ちなみに、今思い出したのですが......マップパートで、ぜひ獲得して読んでみて頂きたい本があります。

と言うのも、ロベスピエールの部屋には、「えっ? なんでその本をロベスピエールが!?」と思ってしまうような意外な本が置いてあります。

「絶対ロベPは読まないでしょ~」と、ツッコミながら私はプレイしましたが、今回のスペシャルショートストーリーを読んで、あの本ももしかしたら『サンドリヨン』と同じような成り行きで、ロベスピエールの部屋にたどり着いたのかもしれないと思いました(笑)

成り行きを想像すると、ちょっと笑えます。「あのセリフをダントンはリーゼに言わせようとしたのかな?」とかとか! 皆様もバックグラウンドを想像しながら、その本を読んでみてくださいね★

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いつも熱いヴェリテ(真実)をありがとうございます!
お便りを頂きましたので、ご紹介させて頂きますね! せっかくですので、高木氏にお伺いしました♪

Q: ミニゲーム要素でもある収集品の、ドレスや髪型、入手したアイテムやお金はリプレイごとにリセットされてしまうのでしょうか。
初回プレイでは自分の一番気になるキャラをがっつり攻略すべく、ミニゲームも隅々まで遊び尽くしたいと思っているのですが、次の別キャラ攻略時にはリセットされてしまうのであれば先に全員を攻略してからやりこもうかなと考えております。
ぜひ、周回要素について教えてください。よろしくお願いいたします。

高木氏A: 
お便りありがとう御座います。お金やアイテムなどは全て周回プレイでは持ち越しします。その他イベント既読情報、クエストも持ち越ししますので、コンプリート目指して頑張ってくださいね。初回プレイは色々やっていると結構時間が掛かると思いますが、2周目からはイベントスキップなどご利用下されば、既に見たイベントは飛ばしてプレイする事が可能です。是非ご利用ください。

そうなのです! リセットされずに持ち越すことができますので、初回プレイで隅々まで遊び尽くして頂いて大丈夫ですよ~♪

周回プレイに便利な機能も多数搭載していますので、快適にフルコンプを目指して頂けるかと! ぜひ、全てのイベントを見て、ヴェリテを解明していって頂ければと思います★

さてさて、引き続き、キャラクターへの質問、ご要望、スタッフへの質問等々......どんな内容でも構いませんので、どしどしご連絡頂けると嬉しいです!

↓以下の画像をクリックでメールフォームへ移行します↓mailform.png

※お名前の掲載の可否を明記いただけますようお願い申し上げます。書かれていなかった場合は、すべて「匿名希望」とさせて頂きます。
※すべてのメールをご紹介させて頂くことはできません。ご了承くださいませ。

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もうお別れのお時間に......

そうだ! ダントンは、絶対にB型だと思うのですよ。だって、SS冒頭の「散らかっているように見えるけど、何処に何があるか、ちゃーんと分かっているんだって」っていうセリフ......言った記憶がありますもの......私も......B型に限らず、片付けが苦手な人の常套句のような気もしますが......

という事はさておき――

発売まで残すところ13日となりました!

オトメイトパーティー2015でハラハラドキドキしながら、発表させて頂いてから、早1年が経ちました。今でも、発表した時の会場の様子を鮮明に思い出せます。

その後、サブキャラクターを発表して、キャストを発表して、各キャラクターの4年後の姿をご紹介して、マップパートで出来ることをご紹介して......プレイ動画もいっぱいアップさせて頂きました。この1年間でお伝えしてきた内容が、少しでもプレイのご参考になれば、とても幸せです。

また、たくさんの素敵なお便りもありがとうございました! すべて、大事に読ませて頂いております。

2週間後の今頃は、アバンチュールをご体験頂いている真っ最中かと思います。
皆様のご感想をスタッフ一同、ハラハラドキドキしながら心待ちにしております!

あっ! 公式サイトのカウントダウンもお見逃しなく! 発売日には、ユウヤ氏描き下ろしイラストもご用意していますよ♪

それでは、今回はこのあたりで!

次回は9月1日更新になります!(木曜日ですのでお気をつけて!)
オルヴォワール~★

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