薄桜鬼総合 その51

皆様こんにちは。【薄桜鬼総合】担当、デザインファクトリーのいわたです。
先週は【薄桜鬼 黎明録】の発売やハロウィンなどで盛り上がっておりましたが、
今週はテンションを少し落ち着けて、あるテーマについて特集しようと思います

その前に、今週のお知らせから。


▼「薄桜鬼 巡想録」公式サイト更新!

今回はダウンロードコンテンツの追加です。来週の11/11(木)に、
初の書き下ろしシナリオ「鬼、集うとき」が配信されることになりました。
それでは、簡単な内容紹介を……。


■「鬼、集うとき」

慶応二年十二月
冬の様相が徐々に色濃くなる頃。
比叡山の麓、八瀬の里。
そこは鬼の子孫が住まうと伝えられていた。
幼い娘達が無邪気に遊ぶ、動乱の中の平穏。
そこには住まう里の長、
千姫の元に、
不穏を纏う招かれざる者が現れた・・・



薄桜鬼ファンの方々からも多くリクエストをいただいておりました、鬼サイドのお話を
藤澤Pが書き下ろしたシナリオとなります。
新規のCGなどはありませんが、知られざる事実がいくつか見えてくるかと思います。
ご興味のある方は、ぜひ遊んでみてください。


▼【薄桜鬼 黎明録】主題歌「風遙か」発売!

11/3に黎明録の主題歌・挿入歌を収録した吉岡亜衣加さんのCDが発売されました。
OP曲「風遙か」とエピローグソングの「消えない虹」が収録されています。
ゲームの世界を彩る素晴らしい曲をぜひお手元にどうぞ。

今週は、黎明録の音楽世界――主題歌、ED曲、挿入歌の特集をいたします。
ゲームそのもののテーマども盛り込み、たっぷりと掘り下げていきますので、興味のある方はぜひ
続きからご覧ください。(※多少のネタバレ要素がある場合かこざいます。ご注意を!)

 

▼歌が織りなす「黎明録」の世界

まずは、この日のためにわざわざコメントをお寄せくださった、歌姫おふたりのコメントを。

<吉岡亜衣加様>

私の中でもデビューから歌わせていただいている薄桜鬼はすごく大切な作品で、
今回また主題歌を歌わせていただけることがとても嬉しいです。本当に本当にありがとうございます。

「風遥か」はOP曲ですがアップテンポというわけでなく、
じわじわと熱い感情が湧き出てくるようなイメージの曲です。
これまでも薄桜鬼の楽曲に多く関わらせていただきましたが、
黎明録は新撰組との出逢いということで私も一昨年の薄桜鬼との出逢いを思い返し、
薄桜鬼に対しての深い思いや精一杯の愛情を込めて私の中でもかなり気合を入れて
歌った一曲になっています。
ゲームを始めて、出だしの「風遥か~」からグッと薄桜鬼の作品に入り込んでもらえるように想像して、
力強くたくましく、そして時に哀しく歌い上げました。

「消えない虹」は一緒に今というかけがえのない時を大切に生きていこうという曲です。
言葉を大切に大切に歌ったので、エピローグの時にこの曲をじっくりと聞いていただけたら嬉しいです。
風遥か、消えない虹、是非ゲームと一緒にお楽しみください。

そしてこの二曲が入った収録されたシングルCDが11月3日にリリースされました!
ゲーム、CDとも皆さんに手にとって頂けると嬉しいです。

ライブも精力的に活動しています!
11月7日は地元の掛川でお茶のイベントにお昼から夕方まで出演予定しています。
そして12月25日には私の誕生日で、バースディ&クリスマスライブを企画しています。
この頃には風遥かもお披露目できると思うので是非CDリリースとライブ、
どちらもよろしくお願いします。


→ 吉岡亜衣加様公式サイトはこちら 


<mao様>

エンディング主題歌を歌わせていただきました、maoです。

作曲家さん、作詞家さん共に
初めてお仕事させていただいた方々なので
とても新鮮な気持ちで歌う事ができました。

曲も歌詞もとても美しいので
メロディはサラリと流れるように
言葉は一節一節を大切に

大事に大事に歌わせて頂きました。

個人的に、この曲、大好きです♪
薄桜鬼の世界観にすぅっと寄り添えているのではないかと思います。

この曲がカラオケに入ったら
絶対に歌うと思います。(笑)

聴いてくださるみなさんにも
愛していただけたら、とても嬉しいです!


→ mao様公式サイトはこちら 


吉岡様、そしてmao様、お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。
おふたりの素晴らしい歌声があって、黎明録の世界が完成したのだと思います。
心より、感謝いたします。


黎明録は企画当初から明確なテーマが決まっていました。
……というより、企画段階で「絶対これをやる!」と決めていたものが、そのまま形になっています。
それくらい最初から、こういうものを作ろう、というビジョンが明確に見えていたのだと思います。

そのため、楽曲を依頼する際にも、OPからED、そして挿入歌までの流れを非常に重視しました。
私がメインでディレクションしている作品で楽曲を書き下していただく場合、必ず盛り込んでほしい
テーマなどをまとめたテキストを提出しているのですが、今回はまずそれをご紹介しましょう。

 * * *

<主題歌/OP用>

今回は主人公が千鶴ではないため、千鶴の心情には沿いません。
また、主人公が男性のため、こちらの心情に沿うこともありません。

もっと広範囲に、幕末の時代に生きた男たちを見守ることしかできなかった女性、
という視点での主題歌をお願いしたく思います。
例えば江戸で待っている近藤の妻とか、沖田の姉とか、亡くなった外伝主人公の母とか、
そういった女性たちの思いをテーマとします。

薄桜鬼本編が満開の桜が散り行くまでの物語だとしたら、
外伝はまだ花開く前の葉桜です。

ここで「見守る」女性は、隊士たちの恋人ではなく、
母や姉など恋愛関係にはならない存在とします。
その上で、将来本編で出会うだろう千鶴を立ててください。
私は見送ることしか出来ないけれど、戦うあなたの傍に心安らげる誰かがいてくれたら、と
願うようなイメージです。



 できることなら傍にいて欲しい。けれどあなたはもう駆け出してしまった。
 私にできることはその身を案じることだけ。
 志に生きるあなたの姿は眩しいけれど、だからこそ儚く見える。それが怖い。

 今はまだ花開くかさえわからぬ道を駆けるあなた
 その先に求めるものがあるのなら、私はただ祈るだけ
 どうかせめて、悔いのないよう生きて欲しい

 たとえ鮮やかに散る運命だとしても
 無駄ではなかったと、やり遂げたのだと笑って

 願わくば、傷つき斃れたあなたの傍らに
 癒し支える誰かがいてくれたなら――
 遠く西の空に向けて、私はただ祈るだけ



曲調としては、ミディアムバラードかと思います。

できれば、冒頭はサビのアカペラから入って欲しいです。
吉岡さんの声には力があるので、強い祈りが届くように、印象的に聞かせたいです。


<ED用>

こちらのEDは、千鶴視点となります。
OPからテーマを引継ぎ、本編エピローグの時系列で過去を見ている感じです。

外伝の個別EDは、薄桜鬼本編エピローグの時系列に絡みます。
つまり、攻略キャラと千鶴の二人に外伝主人公が出会い、若干の会話などがあります。
かつては先行きさえもわからない場所で闇雲に戦っていた彼らが、ひとつの道を駆け抜け、
最終的にたどり着いた場所が千鶴の傍らなのだとわかったところでEDとなります。

千鶴の心情としては、

艱難辛苦を乗り越えて今の慎ましい幸せを得た。
けれども、ここに至るまでには多くの悲しみがあり、今もそれを背負いながら彼は生きていること。
中には自分が知らない間に起きたこともあるのだろうこと。
そういったことを考えると少し寂しい。けれど、私にできるのはただ寄りそうことだけ。
戦い終え、駆け抜けた彼を少しでもやさしく包み込んであげることだけ。

多くは望めないかもしれないが、ささやかでもいい、どうか彼に安らぎを。
そして、次の桜をまた二人で眺めることができますように。

そんな雰囲気です。
曲調はバラードです。ピアノでお願いします。



<挿入歌>

歌詞のイメージラインですが、以下のようにお願いいたします。

曲が流れるのは、ゲームが一度EDを迎えた後に出てくる千鶴視点のボーナスシナリオです。
このシナリオは、薄桜鬼本編のエンディング後の設定で、
千鶴と攻略キャラが夫婦・恋人になっている状態です。

主な内容としては、過去にはいろいろと悲しい出来事も思い出さずにはいられない人たちもいたけれど、
自分たちはそれを背負いながら残された時間を精一杯生きていきましょうね、という感じです。

歌詞の世界観としては、
ずっと手が届かないと思っていた人がこれからはずっと一緒にいてくれる。
たまに過去の悪夢を見たりすることもあるけど、目を覚ましたら隣にあなたがいるから大丈夫。
……というような、新婚を思わせるものが良いです。


 * * *

以上です。なんとなく概要はつかめていただけたでしょうか。

実は、今回はちょっと珍しいゲストをお招きしています。
このイメージをもとに、作詞を手掛けていただいた上園彩結音様です。
薄桜鬼関連でもおなじみの作詞家さんですが、今回は縁あって、作詞の際の制作秘話をたっぷりと
ご寄稿いただくことができました。こういう機会はあまりないので、ぜひ読んでみてください。


「風遙か」

OPは頂いた企画書を脳裏に浮かべて、曲をラララで口ずさんでたら、
まず冒頭の「風遙か」のワードが降りてきたんです。
「幕末の時代に生きた男達を見守ることしか出来なかった女性たちの想い」というテーマと
曲の響きと合わせて、これだ!と想いました。

「江戸で待っている近藤の妻、沖田の姉、亡くなった外伝主人公の母…」という
企画書のくだりで、もう涙腺崩壊でした。。。
隊士たちの背中を見送り、帰りを待ち侘びる女性……
毎夜、空を見上げ、月に無事を祈る姿が鮮明に浮かび上がりました。

時代を駆け抜け生きる隊士たちを、遙か遠くで案じる他なく、
出来るものなら流れ星になって追いかけて逢いに行きたい、と願っただろうと……。
1行目のフレーズはそこから生まれました。
人は、自らを燃やす炎で周囲をも照らし、輝いて生きる星だと想えたんです。
同時に、火の中に我が身を投じ、蘇る不死鳥にも重ね合わせました。

「殺伐とした血なまぐさい世界観」=「火の粉」や「朱い雨」等の表現が
OPムービーの炎のイメージとうまくリンク出来て嬉しかったです。
浮かび上がる「誠」の文字にも感動でした。。。

実は全体を流れるテーマは「母性愛」なんです。
「見送ることしか出来ないけれど、戦うあなたの傍に心安らげる誰かがいてくれたら」
これこそ母性愛、究極の愛だと感じました。

本当は身を裂かれるほどつらい、、、だけど「世界中の孤独を抱いても」あなたの幸せだけを願いたい。
無償の愛=「水のように自由に形を変えられる愛の器」で、あなたを守りたい。
…そんな想いを表現してみました。



「今日の永遠」

EDは苦難を乗り越えた後のバラードなので、「母性愛」を前面に押し出してみました。
新選組の隊士たちを見守る想いは、現代にも通じる普遍的かつ究極の愛だと想うのです…。

企画書の
「彼は今も過去を背負いながら生きていて、中には自分が知らない間に起きたこともある。
そんなことを考えると少し寂しいが、私に出来るのはただ寄りそうことだけ」
この気持ちは女性として痛いほど共感できて…どうしても表現したかったので、
「私が知らないあなたの時間つなげれば 寂しさも愛しい欠片(かけら)」というフレーズに込めてみました。

逢うことも叶わなかったあなたが目の前にいる、それだけでいい。
「今日」は紛れもない事実で、私にとっては「永遠」のものだから。
戦いに疲れたあなたを今は優しく包むだけ。どうか安らぎをあげてほしい、という祈りの歌になっています。

サビの「あなたが生まれる前に抱かれた海」、これは「胎内」のことなんです。
「生まれる前に母のお腹の中で包まれていたように、私もあなたを包んであげたい」
という想いを描きました。。。
とはいえ、歌詞の捉え方は皆さんそれぞれのイメージが正解だと思っています。
「人類が誕生する前、地球に初めて海が出来た天地創造からの変わらぬ想い」という
壮大なスケールで解釈して頂くことも出来るかもしれません(*^^*)

サビ2行はすぐに浮かんだのですが、黎明録の3曲中、この曲が1番難産でした(笑)
それは、黎明録が新しい物語であるという意識から、これまでのバラードと比べて
「薄桜鬼」の世界観を継承しつつ、どこまで新しさを出せばよいのか、
さじ加減を模索していたからだと想います。
でも、「慈愛」をテーマに舵を取って、試行錯誤した結果、
神秘的で奥行きのある作品に仕上がった気がしています。



「消えない虹」

エピローグ曲は薄桜鬼本編(新選組奇譚)のエンディング後の設定で、
千鶴と攻略キャラが夫婦・恋人になっている状態とのことでした。

毎回、意識してるんですが、特にこの詞では、本編の総集編的な意味も込めて、
これまで自分が取り上げたことのないディテールを探すことから始めました。
「自然」を描きたくて、浮かんだのが「虹」でした。

儚くも美しく、いつ消えるか分からないからこそ、刹那=「二度とない今」を大切に感じる…
まさに千鶴の今ある幸せに似ている、と感じました。
実際の虹はすぐに消えてしまいます。
だけど目と心に焼きつけた虹は希望のようにけして消えないもので…
きっと愛する人と過ごした1つ1つの消せない想い出と同じものだろうと…。

企画書で頂いたように「思い出さずにはいられない人たち」がいて、
この幸せは多くの犠牲者も生み、壮絶な戦いをくぐり抜けた、悲しい過去の上に成り立つもので、、、
二人にとってはきっと手放しでは喜べないものだと思うのです。
それらを背負い、しっかりと胸に刻みながら、彼らの分まで今ある刻を大切に慈しみ、
生きてゆこう、という甘いだけではない感謝と鎮魂の想いを綴ってみました。

「手が届かないと思っていた人がこれからはずっと一緒にいてくれる。
たまに過去の悪夢を見たりすることもあるけど、目を覚ましたら隣にあなたがいるから大丈夫」
という企画書の言葉にも深く共鳴して、
「過去の影に 怯え目覚めても 夜も陽だまりで包んでくれる腕がある」
というフレーズで表現してみました。
新選組の生き様をなぞって「浅葱の道」というフレーズも忍ばせています。


それぞれ3曲とも原作、物語、企画書、ムービー、絵、すべてに感動とインスピレーションを頂いて、
涙しながら綴った大切な宝物です。
薄桜鬼シリーズに出逢えたことを心から幸せに感じています!

→ 上園彩結音様公式サイトはこちら 


上園様、本当にありがとうございました!

たまたまお話を伺う機会があり、公式サイトにて作詞の制作秘話を載せていらっしゃるのを見て、
これをぜひ薄桜鬼ファンのユーザー様にもお見せしたい、と考えたのが最初だったんです。
上園様の公式サイトには、他の薄桜鬼関連楽曲の制作秘話も見られますので、ぜひご覧ください。


さて、珍しく楽曲方面から作品世界について解説させていだきましたが、いかかでしたか?
既に黎明録をプレイされ、たくさん感想をお寄せいただいております。ありがとうございます。
どこから感想を送ればいいかわからなかった、という方もいらっしゃいましたので、改めまして
書いておきますと、このブログの左にあるメニューバーの一番下に、メールフォームがあります。
「お問い合わせはこちら」とありますが、感想などもお気軽に送っていただいております。
私たちスタッフのところ直接届くフォームですので、よろしければご感想などお聞かせください。


何度かお話していた通り、私は黎明録を「本編に還る物語」として作ろうと思っていました。
黎明期の彼らの姿を見た後、どうしても本編をやり直したくなるような、そんな物語を作りたかった。

黎明録の主人公・龍之介は、「新選組隊士」ではありません。
彼らと命を共にする「仲間」とも、厳密にいえば違います。
露骨な言い方をするならば、彼はあくまで「通り過ぎた者」なんです。

そして、幕末に消えて行った数多くの「名もなき者」と同様に、彼は新選組を離れ、
時代を駆け抜けていく彼らの姿を見送ります。

その先にあるのが「薄桜鬼」本編であり、彼らが行きつく先で待っているのが、彼女です。
すべてはそこに還る、そこで完結するのだ、という思いが当初からありました。

どうか、黎明録をプレイした後、もう一度本編をプレイしてみていただければと思います。
これまでは見えなかった、知らなかった過去を知ったことで、既に知っているはずの物語が
別の角度から見られるようになっているんじゃないかと思います。


それでは、今週はこの辺で。
また来週お会いしましょう! ではではー。

 

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