夏空のモノローグ その6


オトメイトスタッフブログをご覧の皆様、こんにちはー。
【夏空のモノローグ】担当、デザインファクトリーの一(にのまえ)ジョーと申します。

第6回更新となります。
 

……。
…………。
 

ふーむ。
毎週更新になってから初の更新となるわけですが、
やはり今までの隔週と違って更新がとても早く感じますね~。
なんというか、感覚的には
『あれ? もう、ブログ更新? さっき更新したよね?』って感じです。
いや、まあそれが本当だったら僕は記憶がすっ飛んでいるわけですが。

大丈夫ですよ?
ええ、ちゃんと意識はありますとも。
現在進行形で数秒前まで使っていた、ボールペンを探していますけども。
 

……。
…………。
 

……どこにやったかなぁ……記憶が無いなぁ……。
 


とまあ、ジョーの事情はさておき、
【夏空のモノローグ】blogスタートです!
 



『夏空最新情報』~!
今日は少ないのですが……大きめなので告知しておきます。

来週、6月18日(金)に【夏空のモノローグ】公式サイトにて
プロモーションビデオが公開となります~!
購買意欲をがっつりあおってくれるはずですので、
皆さん期待していてくださいね!

と、今回はこの1つだけです。
その他の新情報については、
また来週までに溜めておきますので、待っていてくださいねー!

 

さて、新情報紹介が終了したところで、
先週より始まりました毎週書き下ろしssへ移りたいと思います!

体験版をまずはプレイしてみてください。
このssはループする7/29、その中のワンシーンとなっています。

毎度毎度違ったテーマによって、
【夏空のモノローグ】の世界を紹介していく形となります。
ギャグもあればシリアスもあり……これらもまた、
紛れも無い【夏空のモノローグ】の一部ですので見逃すことなく、
毎回読んでいただければ幸いです!

今回のお話は割としっとりめです。
それでは早速……夏空webss第2回、スタートです!



natu_line02.jpg 【連載webss第2回 午睡】

遠くからセミの声が届いた。

通り雨に濡れた草の匂いが、かすかに鼻をくすぐっていく。

目を開けると、カーテンが風に揺れていた。

開いた窓の向こうには、青空と入道雲。

午後の強い日差しを受けて、ツリーが白く輝いている。

「午後2時……くらいかな」

何度も7月29日を繰り返し、何度もこの窓から外の景色を眺めた。

もう、雲の形で時間がわかる。

「よく寝てたな」

声のした方を見る。コーヒーメーカーの前に、先生がいた。

よれよれのシャツにボサボサの髪に、白衣を着ている。

いつも通りのかっこうだ。

先生は、穏やかな笑みを浮かべて私を見つめていた。

「あの、いつから……」

「少し前から」

先生の顔をまともに見ることができず、私はうつむいた。

寝顔を見られただろうか。

そんなことを考えると、頬のあたりが熱くなった。

「起こしてくれればよかったのに……」

「気持ち良さそうに寝てたからな。よだれ出てたぞ、よだれ」

「ええ!」

思わず口元を拭く私を見て、先生は笑った。

「うそだよ。よだれなんか出てねーって」

「……か、からかわないでください」

身体から力が抜けていくような気がした。

「ははは。お前は素直だからな、つい反応を見たくなる。かわいい寝顔だったよ、本当は」

「やっぱり、からかってます……」

「まあ、どう思おうとお前の自由だ」

不意に、私の前にカップが置かれた。

気が付けばもうひとつ分、机の前に置いてある。

「反省の気持ちを行動で表してみた。クリームも砂糖もたっぷり入れといたぜ?」

席に着きながら、先生は一口コーヒーを飲み、うまいとつぶやいた。

「しかしあちーな。……アイスコーヒーの方がよかったか?」

私は慌てて首を横に振る。

「いえ、そんなこと。……コーヒー、ありがとうございます」

「大したことじゃねーよ」

先生は少し笑って、扇風機のスイッチを入れた。

扇風機が風を送りながら首を回す。

先生を見つめ、それから再び窓の外に視線を移す。

強い夏の日差しに、外の景色は白く輝いて見えた。

「お前さあ」

先生の言葉に、部室に視線を戻すと、少し暗く感じる。

「夢でも見てたか?」

「え?」

先生は机の上に身を乗り出し、私の顔にそっと手を伸ばす。

突然のことだったので反応できず、私は身体を硬くした。

先生はただ、少し寂しそうな顔をしている。

大きくて温かい手が目元をそっと触れて、離れていく。

先生の指が触れたあたりが、熱いような気がする。

「……あの、どうしたんですか?」

「お前さあ、さっき泣いてたんだよ」

先生の言葉の意味をくみ取れず、私は少し首を傾げた。

「夢を見て、泣いてたんじゃねーかな」

「夢を見て……」

ああ、そうか。

先生は私の涙をぬぐってくれたんだ。

そう思うとなぜか、嬉しいような恥ずかしいような、不思議な気持ちになる。

「悲しくて泣いてるなら、起こそうと思ったんだけどよ」

先生は私を見て微笑む。

「嬉しくても人は泣くしな。結局起こさなかった。……悲しい夢じゃなけりゃ、よかったんだが」

先生の気づかいを嬉しく感じ、私は小さくうなずいた。

「悲しい夢では、なかった気がします」

笑みを作ってそう答える。

本当はよく覚えていない。

よく覚えていないなら、幸せな夢を見たと考える方がいい。

「なら、よかった」

先生はロッカーからプラモデルの箱を取り出すと、ニッパーでパーツを切り出す。

セミの声を背景に、プラスチックを切る音が響いた。

私はコーヒーを一口のんだ。

クリームとコーヒーの香りが口の中に広がっていく。

小さくため息をつく。

コーヒーは好きだ。

きっと記憶を失う前から好きだったのだろう。

「このコーヒー、とてもおいしいです。先生」

先生はこちらを見て少し笑い、それからまた、プラモデルの製作に取り掛かろうとする。

「ずっと不思議に思ってたんですけど」

なんとなく口にした私の言葉に、先生は顔を上げた。

「どうしてプラモデルを作るんですか? 夜の12時を過ぎればまた、7月29日の朝に戻ってしまうのに」

「……んー、そういや、なんでなんだろうな」

先生は複雑そうな顔をして頭をかいた。

「習慣……とも少し違うな。多分、作ってんのが楽しいんだろうよ」

先生は自分の言葉に納得したようにうなずいた。

「きっと、自分の手で完成させるってのがいいんだろうな」

「……飽きたりしませんか?」

「毎回同じ仕上がりにはならねーし、そこがまたおもしれー」

先生の言葉は、なんとなくわかるような気がした。

それは、私がループする日々に対して抱いている印象と同じだったから。

同じ1日なのに、違う1日。

私たち科学部のメンバーだけが、繰り返される今日に気付いていた。

私たちを残して、世界は何度も何度も、今日を繰り返していく。

最初はそれが、心細くもあり怖くもあった。

けれど今は違う。

花火に海水浴。星を見に行ったり、どこかに遠出してもいい……。

7月29日の間に、みんなとやりたいことは山ほどあった。

7月30日には科学部は廃部になってしまうから。

だからこの繰り返す7月29日は、私にとって――。

「……終わらない夏休みみたい」

「ん?」

「あ……いえ、なんでもありません」

つい、考えを口に出してしまった。曖昧に笑って視線を逸らす。

「ループのこと、考えてたのか」

「どうしてわかるんですか?」

「俺はお前の専任講師までしてたんだぞ。考えてることなんてお見通しなんだよ」

そう笑って、それ以上何も言わずに、先生は再びプラモデルを作り始める。

セミの声。扇風機の機械音、ときおり、先生が使うニッパーの音。

雨のあとの風は涼しく、夏の匂いを運んでくる。

静かで落ち着ける場所。

一番、安心できる場所。

みんなと大騒ぎしているときの部室も好きだけれど、
こうして静かに感じる、この部屋の雰囲気も私は好きだった。

7月30日にはなくなってしまうなんて、そんなのは……。

「あの、先生」

「んー……?」

「このまま、ループが終わらなければいいと思ったこと……ありませんか」

おそるおそる尋ねた。

先生の手が止まった。

「どうだろうな」

先生はぼんやりと窓の外のツリーを眺めた。

「明日は来た方がいい、未来は希望に満ちてる。
……とか言わなきゃいけねーんだろうな。理想的な教師としてはさ」

冗談のように先生は言うけれど、声は少し沈んでいて、穏やかな悲しみを感じさせる。

私も窓の外に目をやった。

夏空を背に、ツリーは佇んでいる。

空の青も、山の緑も、雲の白い輝きも、とても鮮やかで美しい。

私たちはしばらく何も言わずにいた。

この窓からの風景は、もう何度も見ているはずなのだけど。

なぜか今日の風景は、かすかな寂しさを含んでいた。  natsuss02.jpg


natu_line01.jpg


静かで寂しいけれど、とても落ち着いている時間。

賑やかで笑い声のたえないような楽しい時間と同様、
それもまた、とても大切な時間ではないでしょうか?


さて、今週のブログはここまで!
また、お土産を置いてゆきますので、
ご自由にお持ち帰り下さいませ。
それではまた次回、皆様とお会いできることを願いまして――。


―ジョーでした。

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