ワンド オブ フォーチュン R 第5回
ごめん今週ほんとネタがなかった。
ごめん今週ほんとネタがなかった。
「失礼します。あの、エルバート先生、週末の外出許可をいただきに......」
「おや、アミィさんですか。珍しいですね」
「は、はい。実は......、ルルの分も一緒に......」
「ああ、なるほど。いえ、素晴らしいことです。彼女がルームメイトになってから
アミィさんはとても意欲的になりましたね」
「そう、かもしれません......。ルルはとても活発なので、つられてしまって」
「それでこそ、青春というものだと思いますよ。......僕のように思い出のひとつも
語れないような寂しい日々を過ごしてほしくはありませんから......」
「ふふっ、エルバート先生、そんなことを言うと、またルルに叱られると思います」
「はっ! ......アミィさん、どうかくれぐれもこのことはご内密に......」
「はい。でも、わたしもルルがルームメイトになってくれなかったら、こんなふうに
先生に軽口を言うようなことはできなかったと思います」
「彼女はいろんな人に変化をくれる子ですからね。情けない話ですが、教師である
僕でも、彼女の存在にはずいぶん救われているんですから......」
「あの......、もしよかったら、エルバート先生も今度一緒にお出かけしませんか?
ルルがピクニックがしたいって言ってるんです」
「えっ、ぼ、僕もですか!?」
「エルバート先生ともっと仲良くなりたいって言っていたんです。それで......」
「は、はい。そうですか。そう、ですね。はあ、その、僕なんかでよければ......」
「本当ですか? きっとルルも喜びます」
「それにしても、ピクニックですか......。あの、僕は何を用意すれば......?」
「え? いえ、お菓子はわたしが作りますし、先生は来ていただけるだけで――」
「そんなわけにはいきません! ......わかりました。今からピクニックについて
勉強しておきます。僕のせいで盛り下がったりしたら申し訳ないですし!」
「そ、そんなことはないと思いますけど......」
「......すみません、アミィさん。僕ちょっとこれから図書館に行ってきますね。
教師として恥ずかしくないよう、ピクニックの極意を身に付けてきます......!」
「あっ、エルバート先生......!」
「......外出許可......、もらいそびれてしまったわ......」
「ところでエストくん。最近ちょっと刺激が足りないと思わないかい?」
「思いません。というか、何なんですか唐突に」
「はあ......。その反応も定番すぎてちょっと飽きてきちゃったね」
「だったら話しかけないでください」
「人間関係を潤滑に進めるには、時にはいつもと違う自分を装うことも大事だよ」
「生憎人間関係そのものを築きたくありませんので。大きなお世話です」
「そうは言っても、なんだかんだいって前より付き合いよくなったよね、エストくん」
「さあ。あなたの錯覚じゃないですか。僕は別に変わってません」
「うーん、あくまで認めないスタイルか。相変わらず頑固だよねえ」
「......アルバロ。暇つぶしなら他でやってください。迷惑です」
「まあまあ。俺が思うに、エストくんはもう少し笑顔を振りまけば人気者になれると思うよ」
「なりたくありませんし、その気もありません」
「世の中にはスマイル0円って言葉もあるんだよ。いいじゃない、笑顔」
「お金を払ってでも遠慮したいものも世の中にはあるんです」
「ちょうどいいお手本もいるしさ。年中笑顔を惜しみなく披露してる子が」
「反面教師にしかなりませんね。あの人の緩んだ顔を真似たいとも思いませんし」
「えーと、何々......【エストのイメージアップ大作戦パート3】――」
「!? な、何ですかそれ。ものすごく嫌な予感がするんですが」
「ああ、気にしないで。これはさっき俺が君の言う反面教師さんからもらったものだよ」
「何故あなたが!?」
「だって相談されちゃったからねえ。エストはもっとお友達を作るべきだと思うの!って」
「なんて......はた迷惑な......」
「ちなみにここに書いてあること、気になる?」
「............。さっさと言ってください。無駄な溜めはいりません」
「主人公・エストが体験するハートフル学園ラブコメディ『スマイル★エストきゅん』!
ミルス・クレアタイムズにて、明日より連載開始!」
「......すみません急用を思い出しましたのでちょっと新聞部に行ってきます!!」
「......ヒマだな」
「そうデスね......何もするコトがありまセン」
「いやあるだろ。てめーはとりあえず部屋片づけろよ」
「今日はそんな気分じゃナイので難しいデスね。ラギ、ヒマなら――」
「誰がやるか。てめーのモノはてめーで片づけやがれ」
「そうデスか......では仕方ナイ。いつか気が向いたらやりマス」
「............」
「............」
「......おい、なんか面白い話とかねーのかよ」
「ラギこそ何かありまセンか。じっちゃとばっちゃの思い出話でもいいデス」
「やめろ。しねーぞ絶対」
「ああ、サトゴコロがついて、また泣いてしまうのがイヤなのデスね」
「またってなんだ、またって! オレは泣いてなんかいねーよ!!」
「大丈夫、大丈夫。ワタシしか知らナイ。誰にも言いまセン」
「だから泣いてねーって!!」
「............」
「............」
「......もういい。オレは寝る」
「やはり、そうきまシタか......」
「話しかけんなよ。寝るんだからな。起こすんじゃねーぞ、絶対だぞ」
「わかりまシタ......。ワタシはするコトがナイので、掃除でもしマス」
「はあ!? てめー今日はそんな気分じゃねーって言ってたろ!」
「たった今、すごく掃除しタイ気分になりまシタ」
「明らかに睡眠妨害じゃねーか! オレは寝るって言ってんだよ!」
「............」
「............」
「しょうがねー......こうなったら行くしかねーか......」
「エエ。デスね......」
「「食堂に」」