皆様こんにちは。
【アーメン・ノワール】原画担当、デザインファクトリーのいけです。
気づけば5月、そしてゴールデンウィーク真っ只中!
急に暑くなったり雨が降ったりと天気が落ち着かない部分もありますが、
思い切って遠出をしたり、【ARMEN NOIR portable】をプレイしたりして
連休を満喫してくださいね。
それでは今週のANブログ、スタート!
■【ARMEN NOIR portable】発売中!
4/12に発売されました【ARMEN NOIR portable】、お楽しみいただけていますか?
PS2版に大幅なシナリオとCGを追加して移植されました本タイトル、
じっくりプレイしてANの世界に浸ってください!
購入を迷っている方は、判断材料に公式サイトやANブログの過去の記事をぜひご覧ください。
また、公式サイトの「SPECIAL」にてPSP専用のカスタムテーマ配信も
しておりますのでどうぞお使いくださいね。
AN宛のご意見ご感想はこちらのメールフォームからどうぞ!
スタッフ一同お待ちしております。
■各種グッズのご紹介
【ARMEN NOIR portable】からANの世界に入られたユーザーさんもいらっしゃるかと思いますので、
ここでAN関連のグッズを簡単にご紹介いたします。
まだ入手していないものがありましたら、この機会にいかがですか?
・『アーメン・ノワール ドラマCD』
PS2版アーメン・ノワール発売後に出ましたドラマCDです。
ドラマ本編はシリアスとなっておりますが、殺伐としたシリアスさではなく、
所々にドキッとするシーンがあったりつい笑ってしまうようなシーンがあります。
さらに、Reyさんが歌うOP&ED曲のフルバージョンも収録。
内容についてはこちらのブログをご参照下さい。
・缶バッチガチャガチャ
ステラワース様の店頭ガチャガチャコーナーにて、
ANのちびキャライラストを使った缶バッチが販売中です。
まだゲットしていない方は今すぐステラワース様まで!
全7種類、ぜひコンプリートしてくださいませ。
ANスタッフが実際にガチャガチャをまわしたレポートもありますので参考にどうぞ!
詳細はこちら→http://www.stellaworth.co.jp/top/shopinfo.html#kan
・クリアファイル
ARMEN NOIR portable通常版パッケージのイラストを使用したクリアファイルが登場!
裏面はPS2限定版パッケージのイラストになっています。
アニメイト通信販売のサイトにグッズの写真など詳しい情報が載っていますので、
気になる方は是非チェックしてみて下さい。
これらのグッズのお申し込み、お問い合わせはこちらまで↓
「アニメイト通信販売」サイト
http://www.animate-shop.jp/
※上記各種グッズについてのお問い合わせは、販売されている各社様へお願いいたします。
弊社ユーザーサポート・ブログ宛てメールでのお問い合わせはご遠慮ください。
■みんなの身長何cm?
ANキャラクターの簡単なプロフィールは雑誌等で既に公開されていたりするわけですが、
そこで身長に関して「一人ひとりのプロフィールじゃ実感が沸かない、全体の身長対比がほしい!」
とのリクエストをいただきました。
今回はそれにお応えして、身長対比表を公開します!
下のサムネイル画像をクリックして全体図をご覧ください。
横の数字を見て、ラインを目で追っていくと分かると思いますが……全体的に皆大きい。
ブーツのヒール込みでの身長のため、裸足になったら少し縮むのですがそれでもやはり大きいです。
女性陣がなかなかの身長だったり、ノワールと各キャラの差が大きかったり……
エルがブーツを脱いだらかなり縮むんじゃないかなど(笑)色々な発見があると
思いますので、じっくりご覧くださいね。
■開発裏話その2■
裏話第二回は先週に引き続き、シナリオ関係のお話です。
再びシナリオライターの望月柚枝さんより、
【ARMEN NOIR portable】開発時の出来事や各キャラクターの裏話を伺ってみましょう。
それでは望月さんにバトンタッチ!
※以下はネタバレを多く含むため、未プレイの方はご注意ください※
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また出てきました。シナリオライターの望月柚枝です。
前回ファーム編だったんで今回はバウンティア編の裏話など。
【エル】
彼のハッピーエンドはレインルート構築後に考えました。
夢限界楼という世界、CAの仕組みは当然PS2時にガッチリ出来上がっていて
今回の移植でも絶対にそこは崩さないのが鉄則というか、
サイトウDと私の間の無言のルールだったので、
その中でどうすればエルが幸せを掴めるか、レインルート同様かなり苦しみました。
エルはANCG班の方の落書きに登場することがとても多くて
その大半がすっとぼけてるというかすごい突き抜けたキャラしていたため
ブログのエルは多分にそちらの影響を受けていると思います(笑)
よくこんな落書き↓が来てました。
そして、これは実際に書くことはなかったんですが……(以下ネタバレのため反転してお読みください)
追加の好感度が低い方のゼクスルートのエンディング後、
ただ一人夢限界楼に戻されたゼクスを
経年劣化で壊れかけたエルが迎えるというシーンを個人的に考えていました。
百年後、帰還を果たしたゼクスが
今はもう廃棄されたバウンティアのビルの社長室へ行く。
そこには半ば動かなくなったエルがいる――そして。
「……おかえりなさい、ゼクス」
そのシーンを書くことも実装することもありませんでしたが
エルは一番物語に可能性があるキャラクターだったなと
シナリオを終えた今思っています。
【ソード】
portableで突き抜けた人その2。
そうなる予感はしてました。
あとキス魔。ものすごいキス魔。
いけさんが「キス絵ばっかりだ……」とうめいたくらいキス魔。
ちなみに、エピローグのスチルはいけさんが私に送られた落書きが元でした。
「これ使わせてください!」と叫んだ望月です。
ソードが子供時代から今に至ってあんなに変貌してしまったのは当然理由があって
ハンターとして犯罪を見続けるうちに人間に対して絶望してしまったんですね。
罪を見続けた結果、人間に絶望したソードと
罪を見続けても、人を信じようとしていたノワール。
この両者の心の在り方の違いが、のちの悲劇に繋がりました。
ちょっとソードからずれますが、サイトウDいわく、PS2版EDのレインは
このソードのような性格に変貌しているそうです。
なのでだいぶ口調が変わっているとか。
ノワールを守るために戦い続けると、
究極はソードのようになってしまう、ということでしょうか。
そして少年ソードの立ち絵なんですが……
発売記念記事でバラされてますが、これも私といけさん(&CG班)の間での
決死の取引の結果生まれたものです。
ゼクスの新規立ち絵同様
「お願いします!! 必要なんです!! なんでもするから作ってください!!」
と言ったらほんとになんでもすることになりました(主にブログ的な意味で)。
でもついでにアルコルを登場させるのも了承してもらったんで結果オーライ。
portable執筆中のCG班のみなさんに対する
望月の土下座回数はちょっとすごいですよ(笑顔)
でも、少年ソードの立ち絵はサイトウDの方で「必要ですね。用意しましょう」と
判断して下さったんで、土下座直前くらいで済んでる……かも。
【ゼクス】
ゼクスルートに関してだけは、サイトウDと揉めました。
実は前作PS2のゼクスのラストは、バトルあたりからかなりの部分で
サイトウ氏の手が入っています。
ゼクスは望月ではなく、サイトウ氏が生み出されたキャラクターで
望月はうまく描ききれなかったんです。
夢限界楼とゼクスは、セットでサイトウDの頭の中にあったんですね。
今回はサイトウDのお手をわずらわせることのないようにと
事前にものすごーく話し合いました。
それでもやっぱり足りなくて、何度も引っかかって、
最後はANCG班の皆様まで巻き込んだ大バトルに……
我々が戦ってどうするんでしょうか。
その節は本当にすみませんでした、いけさん、CG班の皆様。
アーメン・ノワールと言う作品を完結させるために何が必要なのか。
ゼクスの、夢限界楼の何を見せればいいのか
何を捨て何を残せばいいのか
何より、この物語でユーザーの皆様に何を伝えたいのか。
それを引き出すために、かなりの時間を要しましたが
サイトウDも無自覚だったというその答えが零れ落ちた瞬間から
ゼクスルートは一気に書き上げました。
その結果は……
サイトウDの仰った「真に完結するARMEN NOIR」
皆様、どうぞプレイなさってください。
長い語りになりましたが、お付き合いありがとうございました。
最後の最後に、皆様へのお礼としてSSを書かせていただきましたので
どうぞお楽しみください!
望月柚枝でした。
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前回から引き続き開発裏話をありがとうございました!
ちなみに少年ソードの取引についてですが……。
立ち絵がほしいというお話は聞いていたので実はCG班としても
少年ソードの立ち絵は話を進めていく上で必要だと判断して、
「このCGを描くから後でこの作業を協力してほしい」という
交渉をしてみようと思っていたんです。しかしその話をする前に
「なんでもするから描いて」と言われ、
ラッキーな思いをしましたということを暴露しておきます。(笑)
次回の開発裏話はグラフィック関係のお話をしようと思いますので、お楽しみに!
追加イベントCGのあれこれを見ることができるかも?
以上、開発裏話でした。
■帰ってきた連載企画
先週のブログで予告した通り、ブログ最終回に向けちょっとした企画を行います!
その企画とは【ARMEN NOIR portable】連載(前後編)SS・発売後バージョン!!
発売後バージョンなので【ARMEN NOIR portable】追加EDの後日談となります。
これからプレイされる方、購入検討中の方など追加EDをまだご覧になっていない
ユーザーさんはお気を付けください。
ちなみに発売前の連載SS企画はこちら→第一回・第二回
ゲーム以外でも彼らのお話を見たい、彼らが動くところが見たいという
皆様のお声にお応えできないかと思い、ささやかながらSSをご用意させていただきました。
執筆はもちろん、ANのシナリオライター・望月柚枝さんです!
それでは今回は前編をどうぞ!
※【ARMEN NOIR portable】追加ED後のネタバレが含まれているため、
ご注意ください※
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happiness
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ナイヴス
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「ナイヴスの女性遍歴を教えて」
「ぶっ」
唐突にそう言われたナイヴスは、口に含んでいたコーヒーを噴き出した。
「大丈夫? ナイヴス」
ノワールはエプロンのポケットに入れてあったハンドタオルを取り出し、ナイヴスに差し出す。
ナイヴスは受け取って口元に当て、息を吐いた。
「……すまない。ありがとう。
だが、いきなりなんだ、ノワール」
ナイヴスの隣に腰を下ろしたノワールは、小首を傾げるようにしてナイヴスを見つめた。
「ナイヴスは最下層ではとても有名だった。たくさんの人の命を救って感謝されてた。
強くて優しい若い男で見た目もいいから、
私に出会う前に何度か真剣な恋愛をしていてもおかしくない。
って、アルコルに言われた」
「……アルコルに?」
「そう。だからそれを聞き出してくれって。
私が聞けばナイヴスは答えるはずだから、だって。
ナイヴスの伝記に載せたいって言ってた」
「アルコル……」
ナイヴスは口元を拭いたタオルとマグカップをテーブルに置くと、息を吐いた。
「あいつ、まだ俺の伝記とやらを諦めてないのか。
それにノワール、君がアルコルに協力してどうする」
「だって、ナイヴスの伝記をアルコルが作るなら、私も読みたい」
「悪いが俺にその気はない。君もアルコルの口車に乗らないでくれ」
ノワールは表情こそ変わらなかったものの、がっかりした様子で肩を落とした。
ナイヴスはその小さな変化に気づき、眉を顰める。
「…………」
しばらくの沈黙の後、ノワールは膝の上に置いていたナイヴスの手に自分の手を重ねた。
空いていた距離を詰め、擦り寄ってナイヴスを見上げる。
「ノワール?」
「ナイヴス、だめ?」
「……いや、それは」
「だめ……?」
ノワールはそのまま背筋を伸ばし、猫のようにナイヴスの頬にキスすると、体を預ける。
「っ……ノワール」
いつもより行動的なノワールに驚いたナイヴスは、戸惑いつつもノワールの顔に手を添えた。
指で赤い前髪をかき分けてノワールと目を合わせる。
ノワールの鮮やかな瞳は感情の色が希薄で、何を考えているのか眼差しだけでは読み取りにくい。
「……教えて欲しい。
ナイヴスのこと、もっと知りたいから。
ナイヴスの小さい頃のこととか、ヤタガラスと契約した時の話とか、
その他にも、たくさん」
そう言って、ノワールは再びナイヴスにキスしようとする。
「っ……!」
それをナイヴスは宥めるように抱きしめてかわし、ノワールの背に腕を回した。
僅かに赤く染まった顔で目を伏せる。
「……君にそういう風に迫られると困る。
いつもは君からこんな態度に出ることはないのに、今日はどうした」
「こうすればいいってアルコルに言われたから」
「……何?」
「アルコルが、私がキスでもして迫ればナイヴスは口を割るだろうって。
こういうことじゃないの?」
「わかった。次に会ったらアルコルは全力で殴る」
「ナイヴス?」
ナイヴスは身を引くと、ノワールの顔を見返してため息をついた。
「俺は見知らぬ人間に自分をさらけ出す気はない。だから伝記だのインタビューだのは断る。
だが」
「だが……?」
「君が個人的に俺のことを知りたいというなら、話そう。
たいして面白い話ではないと思うが、聞いてくれるか」
「聞く……! 教えて、ナイヴスのこと」
何を期待しているのか、目を輝かせたノワールに、ナイヴスは小さく笑う。
「……そうだな、まずは子供時代の話からはじめよう。
俺の家は最下層にあって、家族は――――」
穏やかな低い声が、2人きりの部屋に響き始めた。
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レイン
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「起きろノワール。メシの時間だ」
「……ん」
「こら、寝なおすな。起きろ。メシ食って風邪薬飲め」
「……んー……」
「ノワール」
「………………」
「30秒以内に起きないとなんかするぞ。窓開いてるけど」
「っ……! ……あ……」
レインの声でベッドから跳ね起きたノワールは、両手で頭を抱えてうめいた。
「あたま、痛い……」
「だろうな。熱が38度以上ありゃ当たり前だ。
俺が買い物行ってる間に水分摂ったか?」
「枕元に置いて行ってくれた水は飲んだ」
「わかった、んじゃ次こっち食え。オートミール用意してきた」
「……ありがとう」
ノワールはもぞもぞとベッドの上に起き上がると、レインからオートミールのトレイを受け取りサイドテーブルに置いた。
トレイの隅にはコップと風邪用の錠剤が乗せられている。
「……イタダキマス。……風邪をひくなんて久しぶりだな」
「階層移動した直後は体調崩しやすいんだよ。その時流行してる病気も違うしな。
ここ座るぞ、ノワール」
「ん……」
上着を脱いだレインは、ベッドに腰を下ろした。
ノワールがオートミールをつつく姿を隣で眺める。
「……こうやっておまえの世話すんの2度目だな」
「そうだね。……あの時もたくさん迷惑をかけた」
「迷惑じゃねーだろ、俺が怪我させたんだから」
レインは手を伸ばしてノワールの襟元に触れた。
そのまま手を滑らせて、ノワールのパジャマを肩の方へとずらした。
「レイン?」
あらわになった肩口にあるのは、引きつれた何筋かの傷だ。
それを見たレインは、ほんの一瞬目を眇める。
「傷、残っちまったな。……ごめんな」
ノワールはレインを見つめ、小さく首を振った。
「他にも傷はあるから、気にしてない。
でも……私に傷があったら、レインは嫌……?」
「……は?」
「見ていて、気分が悪くなる……?」
恐る恐る聞いたノワールにレインは一瞬言葉を詰まらせた。そして、
「んなわけあるか、この馬鹿」
ノワールに腕を回した。
「っ……!」
「暴れんな。なんもしねーから大人しく抱かれてろ。
……っとに、おまえは」
「レイン?」
「それは俺がつけた傷だろが。何で俺を気にしてんだよ。
気にしなきゃいけねえのはこっちだろうが」
「…………」
「ごめんなノワール。……一生責任とるから、許してくれ」
「あ……」
レインは抱き寄せたノワール肩、傷跡の上にキスをし、そのままノワールの髪に顔を埋める。
「……レイン」
ノワールはそっとレインの体を抱き返した。目を伏せて微笑む。
「……うん。許すよ、レイン。レインにつけられた傷なら、私は平気。
もっと酷い痛みでも、レインのためなら耐えられる」
「やめろ、んなこと言うな。もう二度とそんな目にあわせてたまるか」
レインはノワールの頭に大きな手を回し、髪を撫でた。
「愛してる、ナスカ。……だから、精一杯守らせろ。
それから、とっとと風邪治せ。こんな状態じゃ抱きしめてるだけでも壊しそうで怖い」
「……うん。ありがとう、レイン」
そして2人、触れ合うだけのキスを交わした。
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クリムソン
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「お願いがあるの、クリムソン」
「いいよ、キスしてくれたらきいてあげる」
ノワールの言葉に笑顔で即答したクリムソンは、自室のソファに腰を下ろした。
クリムソンは日中のほとんどを診察室で過ごすため、自分の部屋に戻るのは寝る時くらいだ。
しかし今日は診察室の消毒機材が壊れたために午後が休診となり、時間が空いた。
そのため珍しく日中に部屋に戻った矢先、ノワールがクリムソンの部屋を訪れた、のだが。
「……クリムソン」
「うん、何でも聞くよ。だからキスして」
「………………」
「おいで、ナスカ」
呼ばれたノワールは、素直にクリムソンの隣まで歩いて腰を下ろす。
――と。
「そこじゃないでしょう。こっち」
「っ……!」
クリムソンはひょいっとノワールを抱えあげ、自分の膝に乗せてしまった。
バランスを崩して慌てたノワールがクリムソンの肩にしがみつくのを見て、愉しそうに笑う。
「ク、クリムソン……!」
「だって2人きりなんだよ? この方が恋人同士っぽいじゃないか」
「……え。恋人同士っていうのは、普通、こういう風に座るものなの?」
「そうだね。基本こうだよ」
「そ、そう……なんだ……でも、膝に乗せられてるってすごく落ち着かないけど」
「うーん、なら慣れてくれないと困るな。これが世間の標準だから」
「…………が、頑張る」
そう言ったノワールは、頬を染めつつも大人しく膝に乗せられている。
クリムソンは小さく笑うとノワールを抱きしめ、耳元で囁いた。
「で? お願いって何?」
「……あの、今日の午後なんだけど。行きたい場所があって」
「行きたい場所?」
「その……クリムソンと私だけしか知らない、秘密の場所があるの。
そこにシャンタオも連れて行っていいかなって」
「秘密の……?」
「そう。秘密の場所。
……今は私しか覚えてないから、シャンタオにも同じ思い出を共有してほしくて……
クリムソンはその場所のことは知らないと思う。でも……」
「――君が良ければ構わないよ。
あそこには本物の花が咲いているから、花を見たことがないシャンタオは喜ぶだろう」
「えっ?」
「……あれ?」
自分の口から滑り出た言葉に、クリムソンは一瞬固まった。
片手をあげ、口元を覆う。
「……クリムソン、今」
「なんで……私、こんなことを……。
けど、頭に浮かんだんだ。地下の小さな花園と、上から射し込む光が」
「思い……出した、の?」
「わからない。でも……私は……あの場所で、君に……」
「……クリムソン」
ノワールは身を起こし、茫然としたままのクリムソンを抱きしめた。
「……思い出してくれたの? あの日のことを」
「……いや、今のイメージだけだ。
細かいことは……やはりわからない。……すまない、ノワール」
「いい。それでもいい。……それでいい」
ノワールの眦に一筋の涙が浮かんだ。
ノワールはそれを手でごしごしと擦ると、泣きそうな顔のままで微笑む。
「やっぱり、クリムソンはクリムソンだ。
わかってたけど……知ってたけど、嬉しい」
「ノワール……」
「……大好き。クリムソン。
3人で一緒にあの花園に行こう。もう一度、思い出を作ろう。
行ってくれるんだよね、クリムソン」
ノワールの涙に目を奪われていたクリムソンは、
やがて優しく笑うと、ノワールの頬に手を添えた。
「もちろん、君がそれを望むならね。何でも聞くっていっただろう?
ただし―――」
クリムソンはノワールの頬から顎の下に指を回し、持ち上げる。……が。
「じゃあ、シャンタオに一緒にでかけようって言ってくるね」
嬉しそうに言ったノワールは、クリムソンの腕をすり抜け立ち上がった。
「えっ、ちょ、ノワール……!?」
「シャンタオ、お昼ごはんを作ってるから手伝ってくる。
2人でやったほうが早く終わるし、早く終わればその分早く行けるから」
「いやその、あの……」
「またあとでね、クリムソン。ご飯ができたら呼ぶから待ってて」
「ノワール……っ! あ」
笑顔のまま、足取りも軽く部屋を出て行ったノワールを呆然と見送り、
クリムソンはがっくりと肩を落とした。
「ノ、ノワールからキスしてもらうチャンスだったのに……」
部屋の外では、珍しく声を弾ませたノワールとシャンタオが
本物の姉弟、または親子のように楽しそうに午後の予定を話している。
クリムソンの割り込む隙はありそうになかった。
END.
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前編、いかがでしたでしょうか?
どれもほのぼのした中にも甘さを感じる話で、読んでいて幸せな気分になりますね。
今回書かれていないキャラクターの分は後編の来週となりますので、お見逃しなく!
以上、連載SSでした。
■次回のANブログは?
次回は5/11。いよいよブログ最終回です。
最終回ですがSSを掲載したり裏話したりと通常運転でいきますので
よろしくお願いいたします。
それではまた次回。いけでした。ARMEN!!